中国の法律と技能実習生の影響とは?

2023年3月31日   ブログ

技能実習生や特定技能として日本に来るたくさんの中国人。
隣国でありながら、物事の考え方が大きく違うことがあります。
「国が違うから当たり前」で片付けずに、その理由を知ると対応の仕方も変わってきます。
偏見や思い込みも少なくなるのではないでしょうか。
今回は中国の法律からヒントを探してみましょう。

国民性を知る方法とは?

国民性は長い歴史、地形、気候などさまざまな要素によって生まれ、気質とも呼ばれています。
ドイツ人は哲学的、アメリカ人は自由活発、イタリア人は浮気性など言われます。
学問や科学的根拠があるわけではなく、基本的にステレオタイプであることが多いのが現実です。
国民性を知るには、コミュニケーションを通して自分との違いを発見するのが身近な方法です。
例えば、アメリカ人の多くは主張がハッキリしていると感じ原因を考えると、色々な民族や宗教の人がいるから主張する必要があるという説が見つかります。

国の制度や法律から知る方法もあります。
国ごとにバラバラで、作られた当時の世相や世論を反映しています。
例えば「軍隊が存在することは良くないことだ」と思う日本人が多いのも憲法9条や学校教育などの影響があり、その他の判断基準にもなっています。
技能実習生など外国人も母国の制度や法律から影響を受けて判断することがあります。
もし、その環境で自分が育ったらどのように行動するだろうか?と考えてみることが、相手を理解するヒントにもなるでしょう。

中国は共産主義、日本は資本主義

日本への好印象を持つ人が多いのに対し、日本人の中国人への印象はよくありません。
中国は「よくわからない国」という印象があり、隣国で交流も多いのに情報は少なく、どんな相手か分からないと不信感を持ちやすい人間心理が強く働いているのかもしれません。
そんな中国との1つが経済体制の違いです。
中国は共産主義で「国が経済計画を立てて、背生産活動をして、富を平等に分配する」ことを基本としています。
そのため、日本ではあたりまえの土地を所有することは認められず「国から借りる」ことになります。
しかし、中国人は日本の土地を買うことは出来るので、海外の土地所有はステータス的な面もあります。
一方、日本は「自由な経済活動を行うこと」を基本とする資本主義です。
他の人の邪魔をしない限りは、売買や所有も自由で妨害されることもありません。
近年の中国では自由経済を導入していますが、日本や欧米とは違う独自のものです。
元々、世界有数の自由活発な活動をして来たこともあり「商売上手」と言われることも多くあります。

中国に三権分立はない

日本は行政(政府)、立法(国会)、司法(裁判所)が三角形のように、お互いの力を制限する形になっています。
そして行政、立法、司法は横並びの関係でもあります。


行政が好き勝手しようとしても、最終的に国会=国民が止めることができます。
国会が悪法を作ろうとしても、今度は司法が止めることができます。
そして、最高裁判所長官を指名するのは行政でもあります。
しかし、中国は三権分立ではありません。
全てのトップに有るのは「全国人民代表大会(全人代)」で、日本の国会のような位置にあります。
中国は国会の上に中国共産党があり、国会をコントロールしているのが特徴でしょう。
さらに、行政と司法は全国人民代表大会の下にあります。
日本と違って裁判所は違憲・違法かどうかなどに影響を与えません。
中国共産党

国会(全人代)

行政・司法

 

コネや汚職が生まれる理由とは?

法律は細かいルールは決めていない!

中国共産党の影響力がとても強く、日本のように憲法や法律がトップではありません。
中国共産党の影響を受けつつも、法律を制定するのは全人代です。
しかし、人口14億人の中国では国会が決めるのはざっくりとした内容の法律しか決めません。
日本でいうと指針や方針を決めた「基本法」に近いイメージです。
そこで、中国では行政規則、法規、条例の役割が大きいのも特徴です。
海外からすると中国のルールが分かりにくいと言われるのも、多くはこれが原因です。地方によって同じ法律が元なのに、全く運用が違うという事態が発生しているのです。
地方の政府は「中国共産党から任命される官僚」と「地方の長」によって運営されることも、複雑さを生んでいます。
法律で大枠しか決めない方法で2つのルートが存在するので、海外の人からも住んでいる人からも「誰が決めているのか分からない」「どこに話をすればいい?」という状況も発生してしまいます。
とくに地方では行政が恣意的にルールを決めるケースも増えていきます。
そういった環境では人脈や裏金を上手く活用しなければ解決できないこともあります。

チームプレーが得意な中国の気質

歴史的に日本は中央政府と民衆の距離が近かったと言われています。
日本では江戸時代では身分制はあるものの、武士(=役人)と農民とでハッキリと分かれていたわけではありません。
都市部では武士と商人はいわば共存関係で、落語では武士も町人も登場します。
一方、中国は王朝や中央政府と民衆の距離感が遠い上に、地方の独自性もあります。
そういった複雑な環境では、1人1人がしっかりと意思を持って主張し行動する必要があります。
さらに、力を高めるために地域のコミュニティなどを作って結束しなければなりません。
中国人は「自分勝手にではなく、和を重視してチームとして働く」ことを重視しているという結果もあります。
日本人が経営層の指示通りに動き、波風立てずに働くことを重視しているのと比べると、中国人の主体性が強い傾向が見えてきます。
「中国人は自分勝手でチームプレーができない」という印象を持つ日本人もいます。

しかし、中国では目的を達成するために個々がパフォーマスを発揮して、1つのビジネスを動かすことをチームプレーと考えています。
当然、仕事の進め方が合理的でなければ拒否することもあります。
中国人技能実習生が当たり前と思う立ち居振る舞いは、日本人にとっては「波風を立てる」行動に見えてしまうかもしれません。

中国の労働関係の法とは?

終身雇用ではない

日本では労働基準法などは全国一律で適応されますが、中国では地域によって内容や運用は異なります。
中国の労働法は労働時間や休日に関しては日本より厳しい一方、セクハラやパワハラについてはまだ整備が進んでいない面もあります。
そして、中国では終身雇用を前提にしていません。
正社員と呼ばれても雇用期間が決まっていることが多く、雇い止めも容易です。
勤続期間が10年を超える、または契約更新が2回以上されると無期雇用となります。
しかし、日本と違って無期雇用でも解雇はできます。

キャリアアップできなければ退職

中国では初回の契約期間は1~3年です。
つまり、6年以内に転職するのが当たり前です。
そういった法制度では、中国人が会社に求めるものは日本とは変わります。

・大学生が就職で重視すること

【中国】
1位 報酬
2位 企業や自分の職種の成長性
3位 教育体制

【日本】
1位 働きやすさ
2位 やりがい
3位 福利厚生

・転職した理由

【中国】
1位 給与
2位 昇進が期待できない
3位 広い経験・知識を積みたい
4位 専門的な経験・知識を積みたい

【日本】
1位 給与
2位 人間関係
3位 会社の将来性
4位 勤務時間が長い

中国では自分が成長できる環境にあるかどうかを重視しています。
アメリカと同じようにJOB型である中国では、いかに「自分」の能力を高められるかに関心があることが分かります。
一方、終身雇用が根強い日本が重視するものは職場環境です。
働きやすさや人間関係がメインで「会社」がどうであるかが大切で、自分自身の能力や成長に関心が低いことが分かります。
技能実習生や特定技能も自分のキャリアアップのために、日本で実績や能力を身につけることを目的にしていることが多いと言えるでしょう。

さらに、自分がした仕事について正当な評価を受けたいという意識も強いと考えられます。
中国人はドライのように感じてしまうかもしれませんが、実は中国人は「今の会社で働いていたい」と考える人は、日本より多いというアンケート調査があります。
一方で、転職したいと思っている人も、日本人より多いという特徴があります。
「今の会社でずっと働きたくはない、でも転職したくもない」という日本人とは真逆のメンタルリティが育っていると考えられます。
つまり、技能実習生や特定技能が要望を言ったり、退職したりするのは、就職で重視する面や転職理由で挙げたような問題が会社にあるからと考えた方がよいでしょう。

まとめ

近いようで遠い国と言われる中国は、国の歴史や体制も違えばモノの考え方も全く違います。
日本人からするとアクティブに動く中国人。
自分とコミュニティによる自助努力の精神が根強く、国や会社に依存しすぎない姿が見えてきます。
13億人の人口と広大な領土をもつ中国は、法律も地方の独自色が強いという特徴があります。
「中国」と1つの枠で考えるのは難しいことは常に意識しなければなりません。
ふれんど共同組合では中国人の技能実習生に強みがあり、特に介護分野では長年の実績もあります。
もし技能実習生・特定技能制度へのご相談や関心がありましたら、まずはお気軽にお電話またはメールフォームから問合せください!