備品を壊したら罰金なのか?外国人技能実習生と【労働基準関係法令】について解説

2021年12月31日   ブログ

ミスで備品や商品を壊したり、遅刻をしたら罰金を取ったりしている会社もあるのではないでしょうか。

企業側にとってなかなか思うように行かない技能実習生に対して、厳しいペナルティを設定してしまうのは分かりますが、違法であれば最悪の場合、技能実習制度を利用できなくなることもありえるのです。

 

労働基準法の考え方

労働基準法は戦後すぐの昭和22年に制定されました。

企業と個人は「契約自由の原則」により、本来はどんな内容の契約でも双方が合意をすれば結ぶことができます。
しかし、労働では企業側が圧倒的な有利な立場であることがほとんどで、不利になりがちな労働者を守るために最低限の基準を設けることにしました。

 

労働基準法やその関連法は照明の明るさや部屋の広さまで細かく定めていますが、労働基準法が最もしてはならないとしているのは、一言でいうと「奴隷のような状態」です。

 

 

労働基準法で最も禁止されている行為

数ある労働基準法の定めの中でも主な禁止項目を知れば、何が違法となるのか気づくことができるようになるのではないでしょうか。

そして、適正な運用をしながら技能実習生に注意喚起をすることができるようになります。

 

強制労働の禁止

労働基準法の罰則で最も重い

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」とされるのが強制労働の禁止です。

 

暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制することを禁止するものです。

これは「強要」した段階で違法とされる行為とされます。

 

「こんなことをウチの社がするわけがない!」

と思うでしょうが、技能実習生に外出先を言うのを強制したり、外泊を禁止したりする行為をしてはいないでしょうか?
この行為が監禁にあたるのではという議論はあります。

 

寄宿舎のルール

寄宿舎は社宅、アパート、社員寮はあてはまらず「共同生活をする寮」のことをいいます。

寄宿舎に関する法においても外出・外泊の制限や、面会の自由の制限は禁じられています。

 

賠償予定の禁止

契約であらかじめ違約金や損害賠償の額を決めておくことは禁止されています。

なぜなら、実際の損害額より高い金額になるおそれがあるからです。
ただし、実際に発生した損害について企業が賠償請求することは認められていて、損害賠償があることを約束することは禁じられてはいません。

 

とはいえ、皿を落として割ったなど「仕事をしていて通常発生するだろうミス」によって起きた損害を、労働者が全て賠償することは裁判ではほぼ認められていません。
企業が活動を通して利益を得られるなら、企業は損失も被るべきと考えられるからです。

損失だけを労働者に背負わせるのは不当な行為だというわけです。

 

 

前借金相殺の禁止

古くから「借金のかたに働く」という話がありますが、労働基準法では強制労働につながるとして禁じています。
ただし、これはお金を貸す側が一方的に行う場合で、労働者側が自分の意思によって行うこと自体は禁じられてはいません。

 

例えば、当面の生活費もない労働者の申し入れに対して、企業が生活費を貸し付けて、その後の給料から借りた分が控除されるのは、強制労働とは言えないプラスの面があるからです。

 

強制貯金の禁止

技能実習生がお金をいつも使ってしまうから、企業側がよかれと思って月々の給料から天引きをして貯金をしておいてあげたという話はよくあることでしょう。
ですが、これも場合によっては違法になりえます。
なぜかと言えば技能実習生の金を人質にとる状態になりますし、会社の経営状況によっては技能実習生に貯金を返せなくなる恐れがあるからです。

 

ただし、禁止されているのは強制貯金のみです。
強制貯金とは貯金しないなら解雇する、罰則を与えるなど、貯蓄を労働の条件とすることをいいます。
例えば、技能実習生の給料の一部を「社内預金」として企業が管理することや、技能実習生名義の口座を作ってその通帳や印鑑を保管する「通帳保管」があげられます。

 

一方、技能実習生の委託を受けて社内預金や通帳預金をすることは禁じられていませんが、労使協定を締結して労働基準監督署長に届け出る必要や、毎年の報告義務などが定められています。

 

就業規則による制裁はどこまで許されるのか?

賠償額の予定は禁じられていますが、就業規則で定めた制裁を行うことは禁じられていません。

無断欠勤、成績不良、業務命令への違反、セクハラなど職務規律違反、犯罪行為、会社設備や備品の私的利用への制裁は認められています。

しかし、これらは簡単に行えるわけではなく、労働者に正当な理由がないか、企業側に非が無いかを検討しないとトラブルに発展しかねません。

 

減給の金額にも制限があり1回の額は「平均賃金の1日分の半分」までで、1ヶ月の給与総額の10分の1以下でなければなりません。
生活ができなくて困るということを防ぐようになっているのです。

ただし、1ヶ月で減給しきれなかった分を翌月の給与から引くのは認められてはいます。

 

技能実習生の受け入れもできなくなる

労働基準法の違反で罰金となった企業が、技能実習法の欠格事由に該当することで技能実習生を受け入れられなくなった事例は実際にあります。

このように労働基準法に違反をすると受け入れができなくなる上、すでに働いている技能実習生たち自身にも影響が発生するのです。

 

まとめ

技能実習生は労働基準法によって守られて、強制労働の禁止を大原則としています。

法律の文面だけ見ると「そんなことはしない」と思っても、実際にはよかれと思ってやっていたことが該当をしていることもあります。

 

特に制裁は就業規則に定めることが必要ですし、定めたからと言って安易に行うと大きなトラブルに発展をする可能性もあります。

技能実習生に罰金といった発想で対応するのではなく、コミュニケーションや指導を通じて解決していく方向が望ましいでしょう。

 

ふれんど協同組合では、専属の社労士がおります。

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