技能実習生の「駆け込み寺」!?企業が知っておきたい労働組合との向き合い方

2022年4月19日   ブログ

先日、ベトナム人技能実習生が、労働組合からの脱退を強要されたとして、外国人技能実習機構へ説明をことがニュースとなりました。
https://mainichi.jp/articles/20220405/k00/00m/040/271000c

 

仕事上のトラブルや不満を抱えた技能実習生が最初に相談するのは雇用先の企業や監理団体、機構でしょう。
ただ、そうした窓口が必ずしも技能実習生の味方になってくれるとは限りません。
労働組合は、そうした既存の枠組みで問題が解決されなかった技能実習生達の「駆け込み寺」ともなっています。

しかし、企業にとって煙たい存在だとしても、邪険に扱うことはできません。
労働組合から団体交渉などの申入れがあった場合、速やかに対応しなくてはなりません。

では、具体的にどのような対応が望ましいか、また、そもそも、労働組合から訴えられるような事態を避けるにはどうしたら良いか、企業の対応について説明します。

 

 

1 労働組合とは

労働組合とは労働条件の改善・維持を目的とし、労働者自身によって結成されるものです。
弱い立場の労働者が団結することで、企業と対等に交渉するための組織です。
そのため、組合の活動の中心は団体交渉となります。

個人が加入できる組合には「企業別組合」「合同労働組合(ユニオン)」の2つがあります。
企業別組合は企業内で組織され、組合員はその企業の社員です。
一方、合同労働組合は複数の企業の労働者によって組織される企業外部の労働組合です。

 

 

2 労働組合による団結交渉の申入れ

労働環境や待遇に問題を抱えた技能実習生が労働組合に加入した場合、組合はその改善を求めて企業へ団体交渉の申入れをすることができます。
こうした申入れの大半は、合同労働組合からなされます。

しかし、外部の組合からの申入れだからといって、それを正当な理由なく拒否、あるいは無視することは労働組合法によって禁じられています。
ましてや冒頭の記事のように、技能実習生に組合からの脱退を迫るなどということはあってはなりません。
申し入れがあった場合は速やかに応じ、反論がある場合は交渉の場で行っていきます。

 

 

3 団体交渉の結果をわけるのは客観的な証拠

団体交渉の争点としてよく挙がるのが、長時間労働と賃金の未払いです。
こうした交渉に際し、技能実習生は労働時間を記録したメモなどを証拠として提示してくることがあります。
それが事実と異なる場合、企業は反証のための証拠を出さなくてはなりません。
そのためにも、日頃から退勤データを記録・保管しておきましょう。

場合によっては、少しでもお金を稼ぎたいという気持ちから、技能実習生の方から長時間労働を要求されることもあります。
そうした場合でも、労働基準法に定められた労働時間を遵守させましょう。
いざ、こうした争いになった際、「求められたから働かせただけ」という理屈は通用しません。

賃金の支払いについても、正当な支払いをしているのであれば必ず控えを取っておきましょう。
団体交渉では、こうした反証の証拠の有無が解決金の額を左右します。

 

 

4 団体交渉を要求されないためには

では、そもそも団体交渉を要求されないためには、どのような配慮や努力が必要なのでしょう。

 

4-1日頃から技能実習生とコミュニケーションを取る

団体交渉を要求されている時点で、その企業と技能実習生の関係は良好とはいえません。

問題が起きた際、団体交渉を要求される面倒から、技能実習生が組合に入ることを嫌がる企業もあります。
しかし、組合を敵視する前に技能実習生との関係を改善すべきでしょう。

単純な話、組合に加入していても、不満がなければ技能実習生もわざわざ訴えを起こしません。
また、日頃から企業側が技能実習生と密なコミュニケーションを取っていれば、いきなり組合に訴えられることもないはずです。

 

4-2社会保険に加入させる

社会保険への未加入も、組合から指摘されがちな事項です。
加入要件を満たしている場合は、外国人であっても社会保険に加入させましょう。

保険料の天引きで手取りが減るため、本人が加入を拒む場合もありますが、要件を満たしている以上、保険加入は義務です。
保険未加入で怪我や病気をすれば、保険料以上にお金がかかるかもしれないことを理解してもらいましょう。

 

4-3雇用時に雇用条件についての同意を得る

厚生労働省より「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」が示されています。
この指針では、企業は雇用条件について雇用する外国人労働者の母語による書面を交わし、内容を本人にしっかり理解してもらう必要があるとしています。
こうした書面の交付を最初に行うことで、技能実習生の信頼を得ることができます。

 

4-4自分の企業内だけのことと考えない

今や企業として生き残っていくにはコンプライアンス遵守は欠かせません。
名のある大企業ほど、そうした問題には神経を尖らせており、取引先や関連企業にも自社と同様のコンプライアンスに対する意識と行動を求めます。

もしそうした企業と取引がある中で、団体交渉を求められるようなことが起これば、リスクのある企業として、取引を停止される恐れもあります。
このように団体交渉を起こされるマイナスの影響は社内だけに留まらず、社外にまで波及することを知っておきましょう。

 

4-5対応のフローを確認しておく

団体交渉の申入れをされた場合、速やかに応じる必要があります。
また、訴えが企業としての認識と異なる場合、反証材料のデータを短時間で揃えなくてはいけません。
そのためにも、事前にデータ保管の仕方や初動対応の流れを関連部署と確認しておきましょう。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は技能実習生の訴えにより労働組合から団体交渉を起こされた際の対応の仕方や、その予防について説明しました。
そうしたことが起きないよう日頃から技能実習生と真摯に向き合い、いざ申入れをされた際も慌てず対応できるよう、備えておくことが大切です。