技能実習制度で外国人材を採用しようと思っている企業様にとって、日本人との習慣の違いは一つの懸念材料ではないでしょうか?
「コミュニケーションがうまくとれるかな…」
「実習にあたって特別必要なものがあるだろうか?」
契約書などの書類関係はもちろんですが、日々の社会生活においても不安なことはたくさんありますよね。
今回は、受入企業としてどんな準備をしたら良いか、外国人材の労働に対する慣行と共にご紹介いたします。
外国人材の慣行とは?
日本で行われている労働慣行と、技能実習生の母国での労働慣行は異なることが多いです。
違いを理解することは難しいことですが、だからといって努力を怠ると互いの不信感が深まり不幸なことになりかねません。
ベトナムを例に労働慣行の違いを見てみましょう。
ベトナムの労働法では、会社側には従業員の職務内容や職場を変更する権限はないと考えられています。
時間外労働(残業)も労働者の同意が必要で、会社側から一方的な命令はできません。
日本企業の「給料が安いから残業で稼がせやろう」という親切心が、誤解を招くこともあります。
一方的に残業を命じるのではなく、まずは実習生へ聞き取りや相談をするとよいでしょう。
技能実習生が慣れている労働慣行は日本とは違う部分もあります。
「日本に来たのだから従え」という態度ではなく、日本の労働慣行をきちんと理解してもらい、部分的には技能実習生にも合うようにする必要があるでしょう。
また、職種や職場を変えることはそもそも技能実習法によりできませんので注意してください。
受入企業の準備と心構え
技能実習生は日本に入国すると監理団体で日本の風習・文化について学びます。
「学んで来たからある程度は大丈夫に違いない」と思うこともあるでしょう。
ですが、文化の違いにより思いもよらないできごとに遭遇することもあります。
受入企業の心構えとして大事なことは、技能実習生を労働力としてではなく
「1人1人、個性ある人間」として向き合うことです。
技能実習生の多くは言葉も文化も分からない日本に、大きなリスクを抱えて来ています。
病気をしたら?食事はどうしたら?そんな状態からスタートをするのです。
まずは、不安を取り去ってあげる努力が必要です。
受入の準備
技能実習生の多くはインターネットができる環境を希望します。
宿舎などに無ければ手配が必要です。
SNSを通じて近所の母国コミュニティを見つけたり、母国の食品を扱っているお店を見つけたりと生活基盤を作るツールになります。
受入企業としては「見知らぬ外部とやり取りされるのは不安」と思うでしょう。
ですが、日本社会で生活していく技能実習生としては必要なことです。
また、社内書類についても母国語や英語での整備が必要です。
外国語で書かれた基本的なルールブックや作業手順書があれば、受入企業も教育がスムーズにできます。
一定期間は監理団体に通訳対応を依頼するのも一つの手です。
受入後の注意点
ゴミ捨てや買い物の仕方、夜間は騒いではいけないこと、など初歩的なことも早い段階で教育する必要があります。
近隣クレームに発展し、会社としてご近所対応に奔走することになってしまいます。
生活の状況についても、定期的に室内の状況を確認しましょう。
動物を飼育していた、部外者が入り浸っている、ゴミであふれている…など、生活態度に関して指導が必要です。
また、電気、ガス、水道などインフラ関係も注意してください。
日本より暖かい国から来た技能実習生が冬場にガスヒーターを遠慮なしに使ってしまい、高額な請求が来てしまったという例はよく聞かれるものです。
そして、食文化についても互いに学ぶ必要があるでしょう。
イスラム教など宗教上の制限がある場合は特に注意が必要です。
例えば、技能実習生を焼肉に連れて行った場合、「豚肉はダメだから、実習生用に牛肉と鶏肉を頼もう」と気づいたとします。
しかし、宗派によっては「豚肉と同じ調理器具を使って調理した食材」も制限がかかることがあります。
豚肉を焼いた同じ網で牛や鳥を焼いたとしても、人によっては何も食べられません。
「豚肉じゃないのになぜ食べてくれないのだろう?」と困惑することになるでしょう。
地域や宗教についてはセミナーや本などで学ぶ必要があります。
さらに、税制・社会保険、お金の価値観などは特に深刻なトラブルに発展しがちです。
実習生の母国にもよりますが税金・社会保険料が日本のほうが高く、給料から何万円と天引きされることに驚くことがあります。
また、税金を払わなくてもなんとかなると考えていることも少なくありません。
税金の制度や内訳について説明し、日本では滞納は許されないことを教える必要があります。
お金の価値観では「日本での生活費まで母国に送金してしまった」という例がよく見られます。
国によっては「お金がある人が家族やコミュニティを養う・奢ることは名誉」という価値観もあり、「ケチだと思われることが最大の侮蔑」と考える技能実習生もいます。
来日するために組んだローンの返済がある可能性もありますので、1人1人の事情を確認しつつ、手元に最低残す金額と日本でのお金の使い方を指導する必要があります。
まとめ
日本人が当たり前と思う労働慣行も、技能実習生にとって違うことはたくさんあります。
生活面においても、インターネット、住居、お店の場所の地図など環境を整えてあげましょう。
お金の使い方、社会制度など、特に受入開始時は積極的に関与し、粘り強く指導することが必要です。
文化については、セミナーや書籍などで学ばないと違いに気づけないことがあります。
社内研修なども行い、違いを学んでいく姿勢が必要です。
技能実習生に寄り添い、一人の人間として対応することが大切でしょう。