会社を経営していると毎日のように問題が起こりますよね。
設備の故障、取引先の急な依頼…原因はさまざまですが、最も多いのは人間関係のトラブルではないでしょうか。
技能実習生が上司からハラスメントを受けたという例もその1つですが、技能実習生同士でもトラブルは起きます。
今回は、技能実習生同士でどのようなトラブルが起きがちなのか見ていきましょう。
お金の貸し借りによるトラブル
お金の貸し借りも国でルールが違う
日本人は同僚や友人でもお金の貸し借りを避ける傾向があります。
誰かの連帯保証人になることや、銀行から借金をすることにも消極的です。
金銭トラブルによって人間関係を損なうことを戒める話もたくさん存在します。
日本人が個人でお金を貸すときはよほどの緊急事態に限られるでしょう。
借りた人はしっかりと返済しなければならないという意識が働きます。
日本では貸し借りを避けるためか、コミュニティでお金を日々積み立てておき、いざという時に使う「互助会」や「組合」のような考えが根付いているのです。
一方海外では、お金の貸し借りを避ける行為は「ケチ」で不名誉のように考えることも少なくありません。
また、お金を貸さないと「相手を信用していない」というメッセージにもなりかねないのです。
そのため、日本人従業員と比べて金銭トラブルは増える傾向があります。
「借りる=返済する」ではない国も
例えば、技能実習生Aさんは技能実習生Bさんに10万円を貸したのに返済されないケースです。
Aさんが会社の担当者に相談して発覚することが多いでしょう。
Bさんは「母国の家族が病気だから返せない」「他の人からもお金を借りている」など、さまざまな理由で返済に応じないのです。
国によっては「借りる」というのは「貰う」に近いこともあります。
これは日本での「困ったときはお互い様」という感覚に似ています。
返済を期待しない代わりに、自分が困ったら助けて貰うという考え方なのです。
それでも、同じ母国の技能実習生であってもトラブルにはなります。
さらに、国が違う技能実習生同士の貸し借りではよりトラブルになりやすいでしょう。
この例の場合、受入れ企業としては担当者が間に入り、Bさんの借金の状況を整理します。
口約束で貸し借りをしていることが多いので、必要なら改めて書面を作成します。
そして、給料支払日にAさんに返済する場を設けると間違いないでしょう。
監理団体や通訳を交えて、お金の貸し借りをしてはいけないことをしっかりと指導することも必要です。
共通費の支払いでのトラブル
技能実習生は集団生活を送っていることがほとんど。
食品購入や家賃・光熱費などの支払いを何人かをまとめての行うことはよくあります。
技能実習生の中から代表者を決めて、代表者が他の技能実習生からお金を集めて支払うことになります。
しかし、代表者が着服してしまうリスクはゼロではありません。
代表者が代金を支払っておらず催促が来たり、支払金額と残高のズレが誤魔化せなくなったりして発覚します。
もちろん外国人、技能実習生だから不正が起こるわけではありませんが、お互いに疑心暗鬼になってしまうのは避けられません。
家賃や光熱費など定期的に引き落とされるものについては、会社が支払いをしてから技能実習生に給料天引きする形にすればトラブルを防げます。
食品共同購入などプライベート部分にも「最近、生活は大丈夫?ごはんはどうしているの?」など、会話を通して確認すると良いでしょう。
共同生活が原因のトラブル
1部屋で2~3人で生活することが多い技能実習生。
日本人と比べると大人数での生活に抵抗が少ないですが、それでも他人と生活していればストレスはたまります。
- テレビや電気を消さない
- 夜勤明けで寝ているときに騒がれる
- 電話の声が大きい
- 冷蔵庫のスペースを独占している
- 自分の調味料を使われる
- 部屋を片付けない
- 食器を洗わない
みなさんの家庭でも起こることではないでしょうか。
1つ1つは小さなことでも、長期間続けばケンカの元です。
技能実習生同士のトラブルではナイフなど凶器による傷害事件に発展したものもあります。
受入れ企業はプライベート部分が強い領域でも介入する必要があります。
定期的に生活環境が乱れてないかチェックし、相談をしやすい雰囲気を作りましょう。
問題があれば監理団体や通訳も巻き込んでヒアリングし、指導や注意しなければなりません。
ケンカなどトラブルが起きてしまった場合は片方が悪いと決めつけずに、両者から状況を確認することが大切です。
ケンカは警察に逮捕されるものであり、会社が面倒を見ることはできないこともあると説明しましょう。
もちろん、反省文など処分も必要です。
再発した場合は技能実習が終了させる旨を伝えるケースもあります。
原因を調べて解決策を探ることも大切です。ただし、住む空間を離すのは最終手段にしましょう。
宗教や政治にかかわるもの
技能実習生は1つの国に限っていることが多いですが、規模の大きければベトナム人とフィリピン人の2カ国から受入れている場合もあります。
国の数が増えれば、A国出身の技能実習生の悪意のない発言がB国出身の技能実習生の逆鱗に触れることもあります。
とくに宗教や政治に関わるものは感情的になりがちで、一度人間関係が壊れてしまうと修復が難しい話題の1つでもあります。
雰囲気が悪くなるだけでなく、若い世代が多い技能実習生は勢いに任せて暴行事件に発展する場合もあります。
受入れ企業としてはお互いを尊重して、茶化したり煽ったりしないよう教育し、宗教などを議論の対象にしないようなルールを作るとよいでしょう。
ルールは技能実習生だけではなく、日本人従業員に対しても徹底すべきです。
社内恋愛が持つ危険
日本で社内恋愛は「禁止されていても、開けっ広げにしなければよい」というのが多く、懲戒対象となっている会社は稀です。
そのため、出会いが職場というカップルを意外には思わないでしょう。
技能実習生は社内恋愛の可否は国にマチマチで、技能実習生同士が恋人同士になることもあります。
受入れ企業や監理団体から恋愛禁止を命令することはできませんが、あまり歓迎されないでしょう。
「技能実習」にしっかりと取り組んで欲しいですし、後先を深く考えずに子どもを授かったりすれば、技能実習生と子どもにとって不利な状況になるケースもあるからです。
技能実習生同士の恋愛は男女間のよくあるトラブルだけではなく、受入れ企業や技能実習生本人たちだけでは在留資格など解決できないトラブルに発展する可能性もあります。
しかし、技能実習生は日本の社会制度や在留資格への理解が少ないのが実態です。
「お節介」と思っても、母国では当たり前のことを技能実習生としての立場ですると、どんな課題が発生するかを丁寧に説明する必要があります。
SNSによるプライバシー侵害
技能実習生のSNSを見せてもらうと、日本を楽しんでいる写真がたくさんアップロードされています。
会社の飲み会、観光地、社員旅行、BBQパーティー、仲間との写真は、馴染めている証でもあるので嬉しいですよね。
ですがSNSでアップロードされる情報は日本人の感覚からすると「オープンすぎる」という感想を持つでしょう。
技能実習生と仲間内で遊びに行っても、他の仲間の了承なく公開してしまうのです。
何年も日本に住んでいる中で、日本人のような感性が根付いている技能実習生も少なくありません。
技能実習生同士でも自分の名前、連絡先、写真など個人情報を流されてしまいトラブルになることもあります。
しかし、スマホやSNSを制限することは現実的ではありません。
母国の家族とのコミュニケーション、ショッピング、オンライン学習、日本での生活情報など欠かすことができないインフラだからです。
日本人も入社教育や定期的な研修を行うように、技能実習生にも情報教育をするのが近い道でしょう。
個人情報や罰則内容について実例を中心にして行うと効果的です。
とくにSNSの不祥事は日本人でも増えているので、全社的な取組みとして実施してもよいでしょう。
まとめ
技能実習生同士のトラブルは日本人間でも起こりうるものが大半です。
しかし、紹介した事例のように日本では頻度が低いトラブルが発生しやすい実態があります。
母国の文化や制度、日本での生活環境、技能実習生の年代など要因はさまざまです。
「技能実習生だから」と片付けずに1つ1つ原因と対策を考えていくことが長期的には大切です。
ふれんど協同組合では技能実習生のトラブルにもスピーディーに対応。
経験豊富なスタッフによる相談も随時お受けしています。
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