技能実習制度には、実習の段階に応じて、技能実習1号~3号までがあります。
2号、3号への移行どちらにも、実習生へ学科や実技の試験が課されます。
しかし、3号への移行に関しては、実習生への試験だけでなく、企業と監理団体に対してもそれぞれ「優良な実習実施者」と「優良な監理団体」へ認定されることが求められます。
今回は、この3号移行の為には不可欠な「優良な実習実施者」と「優良な監理団体」に認定されるためのポイントや、認定されることによるメリットについて解説します。
【1】 移行できる職種について
技能実習には1号~3号まであるとお伝えしましたが、2号、3号、ともに移行できる職種が下記のように決められています。
- 2号への移行対象職種:86職種158作業(2022年4月25日時点)
- 3号移行対象職種は77職種135作業(2021年3月現在)
そのため、2号・3号への移行を考えている場合は実習を始める段階で移行対象職種を選ぶ必要があります。
企業側は採用段階で、実習生に2号や3号への移行の意志を確認しましょう。
移行対象職種一覧PDF
https://www.mhlw.go.jp/content/000932507.pdf
【2】 3号移行のためには一時帰国が必要
3号への移行のために、実習生に課されるのは所定の技能評価試験(技能検定3級)への合格だけではありません。
3号移行前か、3号の実習開始後に一時帰国する必要があります。
2-1一時帰国の期間
3号移行の為に定められている一時帰国の期間は1ヶ月以上、1年未満です。
ただし、3号実習開始後に一時帰国する場合は、以下の点に注意が必要です。
①一時帰国の時期について、第3号の技能実習計画に記載する必要がある
つまり、帰国するのは実習開始後だとしても、いつ帰国するかは、実習開始前に決めておく必要があるということです。
②一時帰国の期間が3か月を超える場合は、再入国において、在留資格認定証明書交付申請を行い、査証を取得して新規入国する必要がある
また、一時帰国のための出国が3号開始後1年以内であれば、再入国は実習開始から1年を過ぎていても構いません。
例:実習開始後10ヶ月で一時帰国し、実習開始後1年4ヶ月で帰国する(一時帰国期間6ヶ月)
なお、一時帰国中は実習期間には含まれません。
【3】 「優良な実習実施者」に認定されるメリット
「優良な実習実施者」に認定されることのメリットは以下の2点です。
➀受け入れ期間が2年延長される
実習2号までだと実習期間は3年間ですが、3号へ移行すると2年追加され、5年実習を受けてもらえます。
これは企業、実習生双方にとってメリットでしょう。
➁受け入れ可能人数が倍になる
常勤の職員総数を超えない範囲で、実習生の受け入れ可能人数が以下のように倍増されます。
- 1号…基本人数枠の2倍
- 2号…基本人数枠の4倍
- 3号…基本人数枠の6倍
基本人数枠とは、「優良な実習実施者」ではない企業が1年間に受け入れられる1号の実習生の数で、企業の従業員数によって異なります。
「優良な実習実施者」認定による、受け入れ可能人数増加については、こちらの記事でも詳しく解説しております。ぜひご覧ください。
改めて確認しよう!技能実習生を受けれるために必要な準備と資格、受け入れ可能人数
【4】「優良な実習実施者」に認定されるには
「優良な実習実施者」の認定を受けるには、外国人技能実習機構が定める基準をクリアする必要があります。
基準となる項目にはそれぞれ点数が設けられており、6割以上(150点満点中90点以上)得点することが必要です。
また、基準には加点項目だけでなく、減点項目もあります。
ですから、加点項目を満たすだけでなく、減点項目に当てはまらないようにすることが大切です。
以下、ポイントとなる加点及び減点項目について説明します。
4-1 満たしておきたい加点項目
ここでは、満たしておきたい加点項目を3つ紹介します。
➀「過去3年間の基礎級程度の技能検定等の学科試験及び 実技試験の合格率 ※旧制度技能検定2級の合格率含む」
この項目は合格率が95%以上で20点得点できます。
加点が5点の項目も多い中、一気に得点できる項目といえます。
➁「過去3年間の2・3級程度の技能検定等の実技試験の合格率」
この項目も80%以上の合格率で40点得点できます。
➀、➁ともに試験の合格率に関する項目なので、実習生の頑張りが不可欠ですが、その為には、企業が合格のためのフォローをしっかりすることが必要です。
➂「直近過去3年以内に、技能実習の継続が困難となった技能実習生に引き続き技能実習を行う機会を与えるために当該技能実習生の受入れを行ったこと(旧制度下における受入れを含む。)」
基本人数枠以上の受入れ: 25点
基本人数枠未満の受入れ:15点
これも大きな加点項目です。
受け入れる余裕があり、困っている実習生がいたら積極的に引き受けるようにしましょう。
ただし、この項目で得点したいが為の無理な受け入れや、単純な労働力欲しさからの受け入れは禁物です。
そういったことをしていると、次に述べる減点項目に該当してしまう恐れが出てきます。
4-2気をつけたい減点項目
「直近過去3年以内に責めによるべき失踪があること(旧制度を含む。)」(-50点)
上記の項目に該当すると一気に50点失ってしまいます。
他の項目での得点が水泡に帰してしまうほどの大きな減点です。
「優良な実習実施者」に認定されるには日頃から一人一人の実習生と丁寧・誠実に向き合うことが必要です。
【5】 「優良な監理団体」の認定を受けるには
「優良な監理団体」の認定にも基準と点数が設けられており、120点満点中、6割以上得点する必要があります。
特に以下の3項目は配点が大きいので、なるべく多く得点したいところです。
➀「団体監理型技能実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制」(50点)
監理責任者以外の監査に関与する職員の講習受講歴 等
➁「技能等の修得等に係る実績」(40点)
過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率 等
➂「相談・支援体制」(45点)
直近過去3年以内に、実習継続が困難になった実習生(他の監理団体傘下の実習実施者で実習を行っていた者に限る)の受入れを行ったことがある 等
まとめ
今回は技能実習3号へ移行するには欠かせない「優良な実習実施者」・「優良な監理団体」へ認定されるメリットや、認定の為の基準をクリアするためのポイントについてお伝えしました。
これから実習生の力も借りて事業を拡大していきたと考えている企業の担当者の方は是非「優良な実習実施者」の認定を目指してみてください。
認定を受けるだけで、企業自体の信頼も上がります。