担当者が感じた技能実習生を受入れて良かったこと

2022年12月14日   ブログ

検索サイトで「技能実習生」と検索するとネガティブな結果が上位を占めます。
悲惨な状況に置かれた技能実習生のニュース特集も定期的に配信されていますよね。
しかし、一般的な技能実習生や担当者の声を聞く機会はありません。
そこで今回は実際に技能実習生の担当者から「よかったこと」をテーマに伺った内容をお伝えします。

地方の中小企業担当者のリアルとは?

お話を伺ったのは東京から電車で2時間ほどの場所にある、地元に根付いた某企業。
設立から約半世紀、従業員数約100名を抱える総務部で外国人の担当をしている方です。
担当者の方は会社として初めての技能実習生の受入れに携わり、数年間に渡って対応に奔走しました。
よかった思い出や得た経験はなんでしょうか?

業務の幅が広がった

技能実習生と日本人従業員は労務管理、社会保険、税金処理などほとんど違いはありません。
一方で、技能実習法や在留許可など技能実習生にしか発生しないものもあります。
冷静に分けて考えればよいのですが「外国人」というイメージから、必要以上に混乱してしまいました。
とくに受入れ直後は在留カードや技能実習生の母国語が並ぶパスポートなど、見慣れない書類が登場します。
その書類をどのようにファイリングするかというのも考えなければなりません。
さらに行政手続きや銀行窓口でもたくさんのつまずきがあります。

例えば、技能実習生のフルネームは長いことが多いですが、省略やカタカナ表記をするかも判断がつきません。
小さな戸惑いや疑問を1つ1つ監理団体の担当者や役所などに問合せて解決していく作業は貴重なノウハウの蓄積にもなりました。
正直、投げ出したくなりましたが技能実習生も同じような混乱の中にあるのだと気合を入れることで乗り切ることができました。

英語スキルが上がった

技能実習生の母国で発行された書類に日本語は書かれていません。
契約書関係も併記が英語ということは少なくありません。
監理団体や通訳にサポートして貰うこともありますが、当然自分で解決するのが早いですよね。

「習うより慣れろ」で英語を習得していきました。
と言っても、書類で使う言葉は限られているので想像よりは苦戦しませんでした。
技能実習生が日本語を習得するまでは英語を使うことが多いので、昔よりは英語力は上がったと思います。
英語が使えると思われると技能実習生の日本語習得が遅くなることもあるので、ほどほどにはしています。

日本人従業員の個性が見える

技能実習生は外国人という以上に「異質」な存在に感じています。
私たちが日常生活で出会う外国人は観光客を除けば、ある程度日本語や文化を身につけていることが多いですよね。
でも、技能実習生は発展途上国から日本語はもちろん、技術・技能も無くやってきます。
私たちの会社に在籍する技能実習生は母国で食品加工工場の工場長であったり、銀行員など立派な学歴・経歴を持つ人もいたりと、非常に仕事の覚えが早い印象があります。
さらに技能実習生は深い事情を抱えて日本に来ています。

さまざまなギャップが日本従業員と技能実習生との間で、複雑な人間関係を発生させます。
日本人従業員が技能実習生に横柄な態度をとったり、逆に無愛想だと嫌煙されていた日本人従業員が根気強く丁寧な指導をしてくれると評判になったり。
総務の立場から今までにはない個性を知ることができました。

自分の価値観が広がる

ゴミや騒音トラブルなどインターネットで「よくある」とされるものは本当に発生しました。
技能実習生を受入れてから5年ほどが経っても、毎月なにかしらトラブルが発生します。
技能実習生は長期間日本に住んでいるので、発生するトラブルも変化していくからです。

最初は文化や言葉について、次は労働問題や待遇、そして徐々に技能実習生の人生に関するものが増えてきました。
登場人物も最初は技能実習生本人、母国の家族、送り出し機関、監理団体など限られています。
数年も経つと「それ誰…?」「どこで出会ったの…?」と聞かないといけない人物が登場するようになります。
例えば、同じ出身国の留学生との間に子どもを授かった技能実習生もいました。
とても困った事態でしたが、自分たちの判断が新しい家族の行方を左右するかもしれないと思い対処しました。
技能実習生との生活は、驚くほど自分たちの世界が狭いことを気づかせてくれます。
当たり前・常識だと思っていることのほとんどは「思い込み」なのかもしれません。

経営者の価値観を知ることができる

社長を始めとする経営陣の考えを知ることができたのはよかったです。
ニュースで取り上げられるように自社が技能実習生を安い労働力として導入したのか、それとも技能実習の理念に共感してなのか分かりませんでした。
結果はどちらも正解。
技能実習生を受入れている会社の多くも同じではないでしょうか。
しかし、現場は逆に判断に迷うことにもなりました。
技能実習生から相談が来たときに「低賃金労働者」と見るか「勉強している者」とでは、心理的に対応が変わってしまいます。
各社、どちらの比重が重いかは判断が分かれるはずです。

日本人従業員の事案は総務部でほとんど完結するのですが、技能実習生については経営者を巻き込むことも少なくありません。
経営者たちに失望するときもあれば、尊敬することもあります。
個人的には失望することが多かったのが本音です。
それも含めてよかったことだと感じています。

業務改善のきっかけになった

創業から約半世紀、規模も地域では大きくなりましたが内情は「力技」でやりくり。
現場は機械化しにくい工程が多くて職人的な雰囲気があります。
会社が発展するために、プロセスを見える化し改善する課題がありました。
しかし、コンサルタントに依頼したり、ISO審査などの場面を活用したりしても、取組みは長くは続きません。
現場からすれば「現場を知らない上が何か言ってる」という感じでしょう。
私も現場出身なので強く言いにくいところがあります。
ただ、技能実習制度では実習計画を立てて進める必要があります。
会社によっては形だけのもので存在自体忘れているところも多いでしょう。

しかし、言葉が通じない技能実習生に教えるにも作業を分解しなければなりません。
今後、技能実習生は増員も検討されているので体制整備は避けられませんでした。
そして「外国人」というイレギュラーな状況は現場の協力に繋がりました。
まだまだ十分とは言えませんが、格段に会社の生産体制も現代化されたと認識しています。

感謝される

技能実習生にコンビニのアメリカンドックとコーヒーを奢ってもらったことがあります。
細かい事情は忘れてしまいましたが、技能実習生の困りごとを解決した後だったことは覚えています。
もちろん、従業員から「ありがとう」と言われることやプレゼントを貰うこともあります。
ですが、日頃苦労している技能実習生からは一層重みがあるように感じます。
それを賄賂に過ぎないという人もいるかもしれません。
確かに「うまく利用されてるな、自分」と思うこともあります。
それでも根本では感謝や信頼という関係はあると感じています。

担当者が感じた「計画の大切さ」

弊社での技能実習生の導入は現場や総務に一切相談無く経営陣が決めてしまいました。
「〇月◯日から技能実習生が来るからよろしくね」と言われたとき自分はパニック。
社内もパニック状態。
技能実習制度の知識が全くないので何を用意するのかも分かりません。
ですので、監理団体の担当者の指示に付いていく期間は長かったと思います。

技能実習では基本的に担当者は後手に回ることが多いと思います。
ある程度仕方がないとは思いますが「主体性がない」のは問題だと感じました。
導入から技能実習終了まで計画を組んで、あらかじめ発生するイベントやリスクを想定できれば関係者全体の負担を減らすことができたはずです。
中小企業ではトップダウンで話が進んでしまい、現場で辻褄合わせをすることは日常茶飯事です。

しかし、技能実習制度では人生そのものが関わっています。
自分たちの安易な認識や判断で「日本に不幸になりに来た」と言わざる負えない技能実習生もいました。
逆に「よかった」と思ったのはしっかりと準備や調整ができたときです。
当たり前ですが、全員の余裕がなくなると険悪なムードになりがちです。
会社全体を巻き込んだ無理のない計画がよかったことを増やすコツだと思います。

まとめ

今回は技能実習の担当者のリアルな声を紹介しました。
自分の成長、会社全体の改善、経営陣との関係などポジティブな面を聞くことができました。
一方で、他人の人生を扱う責任を感じて悩むこともあったようです。
ふれんど協同組合では日本で学びたい技能実習生と受入れ事業所を結びつけるお手伝いをしています。
担当者様の課題や悩みにもしっかりサポートして円滑な技能実習を実現致します。
もし技能実習生・特定技能制度へのご相談や関心がありましたら、まずはお気軽にお電話またはメールフォームから問合せください!