即戦力として活躍が期待できる特定技能外国人。
一定の日本語力や技能・知識が試験で担保されているので、企業としても採用しやすい存在です。
しかし、まだ認知度は高くはありません。
そこで今回は特定技能外国人の実態について見ていきましょう。
特定技能外国人はどれぐらいいるのか?
「特定技能」とは在留資格の1つで令和元年からできました。
日本国内の人手不足対策が深刻な業種に限定して、即戦力となる外国人を採用することができる制度です。
特定技能外国人は令和4年12月末時点で約13万人。
そのうちベトナム人が6割を占めています。
- 令和2年末:約5万人
- 令和3年末:約5万人
- 令和4年末:約13万人
国が計画した人数よりは下回っているとはいえ、右肩が上がりと言えるでしょう。
活躍している分野では製造分野が約半数を占めていることがわかります。
出典:入出国在留管理庁 特定技能在留外国人数(令和4年12月末現在)https://www.moj.go.jp/isa/content/001389884.pdf
1位 飲食料品製造業 32.3%
2位 半導体や電気機器の製造関連 21.2%
3位 農業 12.6%
近年急に増えている理由とは?
令和4年は新型コロナウイルスの入国制限が緩和されてきているとはいえ、まだまだ証明書の用意や審査が進んでいない状態でした。
令和5年度以降はさらに制限がなくなるので、母国で待機状態だった外国人が日本に入国できる可能性はあるでしょう。
入国制限があったにもかかわらず特定技能外国人が増加しているのは、技能実習からの移行が多かったことが原因の1つです。
技能実習が新型コロナウイルスにより母国に帰れない場合には特定技能に移行する救済処置があったのです。
また、「技能実習の3年の期間を良好に修了した場合」に該当していれば特定技能制度に移行することもできます。
特定技能外国人の7~8割は、元々は技能実習だったと言えるでしょう。
特定技能制度の今後の見通しとは?
国の方針としては人手不足に対応するため、特定技能外国人を増やしたいと考えています。
対象となる業種も広がっていく予定です。
技能実習と特定技能という2つの制度の見直しなども進められて、より柔軟性の高い運用になることも期待されています。
特定技能の在留資格を得るためには日本語力や技能・知識を証明するテストに合格する必要がありますが、海外からでも受験することが可能です。
現地での教育体制などの整備が進めば、日本で働くチャンスは広がるでしょう。
また、日本の専門学校や大学で学んだ留学生の取り込みも進んでいます。
特定技能で認められている仕事は単純労働的なものが多いので、学校で学んでいる内容が高度な専門領域であれば進路としては選択されにくいでしょう。
しかし、介護分野など親和性の高いものもあるため、留学生の状況によっては選択肢に入るでしょう。
制度が複雑で応募者が増えない面も
日本は海外難民や移民に積極的とはいえません。
そのため法制度も「本音と建前」が混ざりあった複雑なものになっています。
外国人や留学生が日本で働こうと思ってもビザの仕組みが理解できずに、選択肢から外してしまうことも。
手続きも入出国在留管理庁、母国の行政機関、登録支援機関、働く企業、応募者などさまざまな立場が絡み合っています。
ようやく特定技能1号の在留資格を取得しても通算で5年、さらに1年、6ヶ月など許可された期間ごとに更新手続きが必要となります。
更新手続きには会社に書面作成・押印をしてもらい、本人が出入国在留管理局に行かなければなりません。
申請等取次者の資格をもつ行政書士などが代理することもできますが、費用がかかります。
制度の複雑さだけではなく、来日後の負担も課題と言えるでしょう。
採用する企業には課題がある
20代が多く即戦力として期待できる特定技能外国人は企業にとって魅力的です。
技能実習、留学生など日本での生活経験がある人材なら、文化風習の違いによるトラブルも発生しにくいでしょう。
労働時間や業務内容の制限が少ないこともメリットではないでしょうか。
ですが、企業にとっては課題やリスクもあります。
転職リスクがある
特定技能は1号と2号があり、1号では特定技能外国人にさまざまな支援をする必要があります。
しかし、これは技能実習とは違って働く場所を拘束するものではありません。
もし、働いている環境が悪ければ転職する可能性もあります。
特定技能では技能資格を持っている分野の内でしか転職できませんが、安心とはいい切れません。
人手不足な業界であればあるほど、特定技能外国人にとって「転職のチャンスは大きい」と言えるからです。
技能実習からの移行ではなく、新規採用した場合には人材紹介会社を利用することもあります。
その場合、紹介料が100万円台になることも。
せっかくお金をかけて採用しても、一定期間過ぎて転職されてしまえば紹介料の返金を求めることはできません。
手続きや管理が大変
外国人が特定技能の在留資格を取得することが大変なように、企業側も制度理解や手続きは大変です。
技能実習と比較すると管理内容は少なくなりますが、定期的な書面提出やビザ更新対応をする必要があります。
登録支援機関や行政書士などに業務支援や依頼する場合でも、丸投げのような状態は経営リスクにもなってしまいます。
一定程度は自社で対応できるように体制整備が求められるでしょう。
特定技能1号から2号への移行は難しい
令和4年12月時点で特定技能1号は約13万人。
一方、特定技能2号はわずか8名が建設分野にいるだけと大きな差があります。
特定技能2号になれば更新上限や生活支援はなく、母国にいる家族を日本に呼ぶこともできます。
特定技能2号は「日本で働くその道のプロフェッショナル」と言うに相応しい外国人材です。
企業としては特定技能1号から特定技能2号に移行させることで、高度な人材を自社に抱えることができます。
現在は建設と造船の2分野のみですが今後拡大が見込まれてもいます。
しかし、現在ある建設分野でも合格水準は技能検定1級レベルとされています。
高度な作業能力だけではなく、工程管理の能力も問われる難易度の高いものとなっています。
誰でもたどり着けるとは限らないのです。
まとめ
特定技能外国人は人手不足に苦しむ産業にとって魅力的な存在です。
ですが制度の複雑さや在留資格の更新頻度など問題を抱えています。
転職リスクや事務処理が煩雑などデメリットもあります。
しかし、今後は受入れ可能な業種が増えたり、特定技能制度を利用しやくなったりすることも予想されています。
ふれんど協同組合では介護や製造分野を中心に特定技能制度の支援を行っています。
技能実習制度へも対応しており充実したフォロー体制があります。
もし技能実習生・特定技能制度へのご相談や関心がありましたら、まずはお気軽にお電話またはメールフォームから問合せください!