技能実習生を受け入れる前に知っておきたいこと★外国人技能実習生の受入で守るべき法令とは?

2021年11月19日   ブログ

外国人技能実習生を受け入れる企業様には、たくさんの守るべき法令があります。

基本的には日本人を雇用する時と同様なのですが、外国人材ならではの耳慣れない法令も関わってくるのです。

 

大きく「出入国関係」と、「労働・社会保険関係」に分けられます。

今回はなるべくわかりやすく。解説をしていきます。

 

出入国関係で守るべき法令

出入国管理及び難民認定法(以下:入管法)

技能実習生として日本で働こうとする外国人材には、入管法で認められた「在留資格」によって活動範囲が決められています。

在留資格がなければ、原則として日本に在留(一時的に外国とどまってに住むこと)したり、仕事をしたりすることはできません。

また、在留資格には令和3年8月現在で29種類あり、それぞれ就労条件や在留期間などの条件が違います。

そもそも就労不可の在留資格もあり、すでに日本に在留している外国人を技能実習生として雇用する際は在留資格の確認・変更手続きが必要な場合があるので注意しましょう。

 

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下:技能実習法)

技能実習生の保護を目的としたこの法律は、外国人材を「安く使える労働力」として扱う受け入れ企業がたびたび問題になったため施行されました。

(基本理念)

第三条 技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。

2 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。

引用:(技能実習法)第三条(基本理念)

基本理念に見られるような受け入れ企業への意識づけから始まり、技能実習を行う際の計画の認定や基準、禁止行為について細かく定義されています。

 

技能実習法で特に多い違反は、「技能実習計画と異なる技能実習を行っていた」ことです。

忙しいから別ラインの作業も覚えてもらおう、という発想は技能実習法では通用しません。

 

労働・社会保険関係で守るべき法令

労働基準法と労働衛生法

「外国人だから」という理由だけで不当な扱いをしている企業は多くあります。
ですが、国籍は関係なく、日本人と同様に労働基準法は適用されるのです。

「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」

引用:労働基準法 第一章 総則 (均等待遇)第三条

「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」

引用:労働基準法 第一章 総則 (強制労働の禁止)第五条

 

働き方や、労働環境は危険や危害がなく、健康に配慮した快適なものでなければなりません。
36協定を始めとした労働時間の規制法、割増賃金、有給休暇制度なども日本人と同じく適用されます。

 

最低賃金法

都道府県ごと定められる最低賃金は技能実習生にも適用されます。
受け入れ時の賃金の設定に関しても、技能実習生と他の一般労働者の従事する業務が同じであれば同等以上にする必要があります。

もし差があるならば、その理由を説明しなければなりません。

 

労災保険

労災保険とは業務中や通勤の途中に、ケガや病気などを負ったときの保険です。
技能実習生にも適用され、治療費をまかなうだけではなく、入院などで休業をする場合には休業補償があります。

その他、障害が残った時の障害給付、死亡した場合に遺族に支払われる給付があります。

 

雇用保険

労働者が失業した場合や、教育訓練、育児・介護休業など、労働者の雇用を安定させるための保険です。
一般的に「失業保険」と呼ばれることも多いですよね。

労働者を1人でも雇用している企業なら、一部の業種・規模を除いて加入対象となります。

 

ただし、全ての労働者が対象ではなく、下記の場合対象となります。

  • 労働者であること(取締役、家事使用人、同居の親族などは対象外)
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 継続して31日以上雇用されることが見込まれること
  • 学生でないこと(例外あり)

とはいえ、ほとんどの技能実習生が加入対象になるでしょう。

加入時には「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出することも必要です。

 

国民年金と厚生年金

国民年金は全ての国民に対して強制的に適用されるもので、技能実習生にも適用がされます。
ただし、入国後の講習期間(企業で働き始めるまで)は免除申請が可能です。

 

企業へ配属後、厚生年金の適用事業所に雇用される場合は厚生年金にも加入する必要があります。
保険料は技能実習生と企業の折半となり、毎月給料から控除することになります。

 

「数年以内に帰国する予定なのにもったいない」と思われるでしょうが、厚生年金には脱退一時金制度があります。

 

厚生年金の加入期間が合計6ヶ月以上あり、

  • 日本国籍を有していない
  • 障害厚生年金などを受給していない

などの条件を満たせば、納付した月数(60月を上限)に応じて一定額が本人に支給されます。

 

国民健康保険と健康保険

国民健康保険は病気、ケガなど病院に受診した際に、費用の負担軽減を目的に給付を行う保険制度です。
市町村単位で加入することになり、入国後の講習期間中に技能実習生が加入することになります。

保険料は本人が負担することになりますが、減免制度が適用されるため数千円程度の負担で済むでしょう。

 

健康保険は技能実習生が企業に配属後に加入する保険で、業務以外での病気・ケガで治療費用の負担軽減を目的にしています。保険料は技能実習生と企業の折半となり、技能実習生分は毎月給料から控除することになります。

ただし、適用されない企業の場合は、国民健康保険に加入をします。

 

まとめ

外国人技能実習生を受け入れる場合、入管法による在留資格の違いや、技能実習法による認定の基準など様々な法令を守らなければいけません。

また、外国人材だからと軽視されがちな労働・社会保険関係の法令は、日本人と同様に適用されることも非常に重要なので覚えておきましょう。

 

「外国人技能実習制度」は、国と国を結ぶ大切な制度です。

受け入れを検討している企業様は、その趣旨と共に基本的な関連法令を知っておきましょう!