技能実習制度廃止!?有識者会議の中間報告の内容とは

2023年5月25日   ブログ

2022年12月14日、政府の有識者による技能実習制度の見直しが始まりました。
当ブログでも以前取り上げた注目の話題です。
2023年4月10日に中間報告書が発表され「技能実習制度廃止」にも言及されています。
では、その内容はどのようなものになっているのか見ていきましょう。

「労働者」としての位置づけへ

技能実習制度は国際貢献を目的として、日本の技術を発展途上の国出身の人々に「実習」を通して人材育成を行ってきました。
しかし、日本の少子高齢化を背景として労働力としての側面が強くなり、制度と実態の乖離が社会問題にもなっています。
そこで、今回の中間報告書では「人材確保と人材育成」を目的とする新制度の創設を検討することを提唱しています。
実態に合わせることで、中長期的に活躍できる「特定技能制度」と今まで以上にリンクした制度に見直す方向となっています。
国際人材協力機構が行ったアンケート結果では、技能実習生を受け入れている企業の多くが、「建前」によって技能実習生を苦しめている状況や矛盾点に疑問を抱いていました。
中間報告書もその声に応えた形とも言えるでしょう。

転職制限が緩やかに?

受入れ企業が技能実習制度を人材確保手段として捉えている現実は少なからずあります。
ハローワークはもちろん、有料人材紹介会社に依頼をしても人材確保ができないからです。
例えば、日本人の作業員は「医師を採用するのと同じレベル」とまで言われています。
技能実習制度ではお金を払えば人が来てくれる上に、転職されないメリットがありました。
転職制限は悪質・劣悪な環境の企業から技能実習生が逃れることができず、失踪を選ばざるをえないという社会問題を引き起こしています。
今回の中間報告書では労働者としての位置づけが加えられた分、転職制限も緩和する方向が打ち出されました。

しかし、人手不足感が強い地方では、生活環境が良く賃金相場が高い地域に転職されてしまう課題が生まれるでしょう。
時間・費用・手間をかけて日本に呼び、もっとも苦労する来日して間もない期間の対応・教育をしたのに、すぐ転職されては公平性に欠けるという意見もあります。
「タダ乗りリスク」を防ぐために、中間報告書では「人材育成」という要素を入れることで、教育の観点から一定の転職制限ができるような余地を残していると考えられます。
在籍期間、転職回数、転職可能な地域などの条件が注目されます。

日本語力が求められる?

技能実習生では一部の業種を除いて日本語力の要件がありません。
これは実習を通じて日本語力も習得することを想定しているためです。
一方、即戦力の人材確保を目的に特定技能制度では日本語力が求められています。
中間報告書では就労前に一定の日本語力を求めており、特定技能制度に近い内容となっています。
事前に日本語力を身につける必要があるため、来日できる人材が制限されるとも考えられるのです。
しかし、技能実習生と受入れ企業のコミュニケーションが上手くできないことによる様々なトラブルを減らすことができるでしょう。

新制度は職種・分野を特定技能と一本化

技能実習制度と特定技能制度は現在でも関連性がありますが、基本的には別々の制度です。
対象となる業種も技能実習制度が87種類、特定技能制度では12分野と枠組みが異なります。
中間報告書では、新制度は特定技能制度への移行を想定しているため、枠組みを一致させるべきとしています。

監理団体の在り方の見直し

技能実習生と受入れ企業をつなぎ、監督する立場にあるのが監理団体です。
中間報告書では監理団体を存続させる一方で、認定要件を厳しくすることが求められています。
監理団体からすると、技能実習生の受入れ企業は監督対象であると同時に顧客でもあります。
受入れ企業と監理団体の癒着によりチェックが十分に機能しておらず、技能実習生の劣悪な労働環境が放置される状況などが問題になっているのです。
労働基準監督署の立ち入りや監理団体の取り消し処分などの件数を見ても、健全ではない監理団体が少なくないことがわかります。
そこで、中間報告書では悪質な監理団体を排除し、さらに独立性や中立性を高める方向性を示しています。

日本は選ばれる国になれるのか?

東アジアで唯一の経済大国であった日本は過去のもの。
日本への魅力は周辺地域の経済発展により相対的に低下しています。
東アジアでもっとも日本に好意的な国民感情があるベトナムも将来的には日本を選ばなくなる可能性があります。
一方、日本の少子高齢社会が改善する見通しは立っておらず、肉体労働的な業界の人手不足は深刻化していくことが予想されます。
外国人から選ばれる国になるためには「日本で働きたい」と思われる形にする必要があります。
今回の技能実習制度を廃止し、新しい制度を創設する中間報告書の内容は日本全体の危機感を反映させたものと言えるでしょう。

海外からの厳しい目とのギャップもある

技能実習制度の状況を大きな問題と考えている日本人は多くはないでしょう。
一方、海外から見ると「重大な人権問題」として見られています。
他の制度や運用においても、人権分野では他の主要国と比べると出遅れていると指摘されることは少なくありません。
世界経済の結びつきが強くなり、さらにAI技術により言葉の壁もなくなりつつあります。
日本の競争力を高めるために、実習生から労働者への転換することで世界の常識に近づける必要性もあるのです。

まとめ

技能実習制度の廃止は今ある問題を解決し、日本が外国人労働者から選ばれるためのものと言えるでしょう。
一方で、転職制限の緩和は地方の人材確保の課題が増えることにも繋がります。
今後は日本に呼び寄せたら終わりではなく、外国人労働者から選ばれ続けるための企業努力が不可欠になるのではないでしょうか。
今回の有識者による中間報告書をたたき台として、2023年内にも最終報告書が出される予定です。
有識者による提言がすべて政策に反映されるとは限りませんが、今後の反応や動向には注視が必要です。

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