帰国時は忘れず申請!脱退一時金とは?

2022年10月26日   ブログ

実習を終えた技能実習生が母国に帰るときには細かい手続きがたくさんあります。
転居に関するもの、銀行口座関係、電気・水道などのインフラ、個人的に契約しているサービス…と手間がかかります。
数ある手続きの1つに国民年金や厚生年金の「脱退一時金の申請」があります

技能実習生も年金加入する

国民年金や厚生年金には縛りはありません。
日本に住んでいる一定の年齢なら国民年金に加入する必要があります。
厚生年金の適用事業所で働いているなら厚生年金に加入することになり、こちらは未成年であっても対象となります。

でも、年金といえば引退後に貰えるお金ですよね。
数年間しかいない技能実習生に年金はいらないと思ってしまいがちです。
数万円も天引きされることに驚いたり、怒ったりする技能実習生も少なくありません。
しかし「障害年金」は現役世代でも対象になるので決して無関係なものではなく、厚生年金の適用事業所にとっては義務でもあります。
とはいえ、まったく制度のお世話になること無く帰国するのに何十万円も保険料を取られてしまうのは問題です。
技能実習生の国によっては協定が結ばれていて、日本での加入期間を母国での加入期間とみなしてくれる場合もあります。
しかし現在ではまだ20カ国程度しかありません。
そこで、脱退一時金制度によって一部の払い戻しができるようになっています。

掛け捨て防止!脱退一時金とは?

国民年金

20歳から60歳まで強制加入の国民年金。
脱退一時金が支給される条件は以下の期間が請求した月の前月までに6ヶ月以上ある場合です。

  • 保険料納付済みの月数
  • 保険料1/4免除期間の月数 × 3/4
  • 保険料1/2免除期間の月数 × 1/2
  • 保険料3/4免除期間の月数 × 1/4

分かりにくいですが、普通に納付した月は「1ヶ月分」としてカウントしますが、免除されて金額が少なかった月はその分も減らしてカウントされるということです。
ただし、一定の要件を満たさないと請求できません。
日本に住んでおらず国民年金や厚生年金に加入してない状態の人です。
もちろん、日本国籍を取得してしまっていたら申請できません。
また、申請には「資格を喪失してから2年間」という期限があるので注意しましょう。
いつまでたっても申請しない人は知らないよということです。

見落とされがちな要件は「過去に年金を受給していない」ことです。
脱退一時金は掛け捨て防止が目的なので、障害基礎年金を受給していたなら申請することはできません。
さらに老齢基礎年金の受給資格(加入期間10年間)を満たしていてもダメです。
受給できる金額は納付した期間に応じて変わります。
自分が納付した金額の約半分が払い戻されるイメージと言えるでしょう。
ただし、60月(5年)以上になると金額が変わりません。


▲日本年金機構 「国民年金の脱退一時金額」より

厚生年金

厚生年金の適用事業所に雇用されていた技能実習生も加入期間が6ヶ月以上ある場合は脱退一時金を申請することができます。
基本的なルールは国民年金と変わりません。

  • 日本に住んでいない
  • 日本国籍を取得していない
  • 資格喪失から2年以内に申請する
  • 過去に年金受給をしたことがない
  • 国民年金の老齢基礎年金の受給資格(加入期間10年)を満たしていない

厚生年金は国民年金と違い賃金によって保険料が変わるという特徴があります。
そのため1人1人、脱退一時金の金額は違うことになります。
脱退一時金の金額を計算する式は下記の通りですが、ちょっと難しいですよね。

被保険者であった期間の平均標準報酬額×(保険料率 × 1/2)× 支給率計算に用いる数

被保険者であった期間の平均報酬月額とは「技能実習生の賃金と賞与の平均」です。
厚生年金は事業所と技能実習生が半分ずつ負担するので、保険料率も1/2にします。
最後の支給率計算に用いる数は「働いた月数」にあたります。

国民年金では納付した金額の約半額が払い戻されていました。
しかし、厚生年金は事業所と技能実習生が保険料を半分ずつ負担するので、結果的に技能実習生が支払った保険料相当が払い戻されることになります。
技能実習生にとって厚生年金の方がオトクと感じるでしょう。
ただし、60月(5年)が上限という点は変わりません。


▲日本年金機構 「Q.厚生年金保険の脱退一時金として、いくらもらえますか。」より

脱退一時金を請求する方法とは?

申請書を日本年金機構に提出

申請書は英語、中国語、ベトナム語など十数種類の言語で用意されており、日本年金機構のWEBサイトやねんきんダイヤルから郵送してもらえます。
原則としては日本を出国後に日本年金機構に郵送します。
申請書には必要な添付書類があるので確認しましょう。

  • パスポートの写し
  • 日本国内に住所がないことを確認できる書類
  • 脱退一時金を受け取る銀行口座情報
  • 年金番号が分かるもの
  • 代理人が請求する場合には委任状


▲日本年金機構 「脱退一時金請求書(国民年金/厚生年金)英語併記版」より

出国前でも手続きはできる

帰国してから手続きするのは不安という技能実習生も多いでしょう。
脱退一時金は出国前でも手続きすることができます。
技能実習生が住んでいた市町村に住民票の転出届を提出し、申請書が転出日以降に日本年金機構に到着するようにします。
技能実習生本人が手続きをする場合は、出国するギリギリに投函するようなスケジュールになるでしょう。

加入してなかったことになるので判断には慎重に


脱退一時金に支給回数はなく、要件を満たせば何度でも申請することができます。
ただし、申請手続きした期間は「最初から加入していなかった」ことになってしまいます。
再び日本で働くことになった場合は、また1から10年間という加入期間を積み上げなければなりません。
技能実習から特定技能2号に資格変更したり、特定の国家資格を取得したりすると在留期間の制限が無くなるケースもあります。
将来的に日本で暮らす可能性があるなら申請しないという判断も十分にありえるでしょう。

まとめ

保険料の掛捨て防止としてある脱退一時金。
国民年金と厚生年金でも基本的なルールは同じですが、返ってくる金額は厚生年金が約2倍という特徴があります。
2年以内という期限があるので、忘れないようにしなければなりません。
要件を満たせば何度でも申請することはできますが、加入した期間は無かったことになってしまいます。

ふれんど協同組合では脱退一時金のような複雑な制度でも、受入れ事業所と技能実習生をしっかりとしたサポート体制で対応しております。
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