役所・裁判所から手紙が!技能実習生への対応とは?

2023年3月1日   ブログ

チラシ、DM、業界雑誌、請求書など会社には毎日たくさんの郵送物が届きます。
総務部が仕分けたり、規模によっては社長が最初に確認したりすることもあるでしょう。
そんなときに送り主が「◯◯裁判所」という封書であったらドキっとしますよね。
さらに、内容が自社の技能実習生についてであれば、尚更です。
今回はある日突然送られてくる、行政や司法からの手紙の正体について説明します。

どんなときに手紙が来るのか?


行政や司法からくる手紙には技能実習制度に関係するものと、日本で働いていれば誰にでも可能性があるものに分かれます。
行政からくる手紙は在留資格そのものを除けば、ほとんどが税金についての問合せです。
送り主は市町村のことが多いでしょう。
さらに、技能実習生本人に問題がある場合と会社の処理に疑問がある場合に分かれるのが特徴です。
司法からの手紙の場合は「給料の差押さえ」の通知のケースが多いでしょう。
簡易裁判所や地方裁判所からで、会社所在地からは遠方の管轄裁判所から送られてくることもあります。

住民税を滞納していた場合


住民税は給料から天引きされ会社の義務でもあります。
会社に罰則もあり技能実習制度でのチェックでも確認されるため、基本的には天引きをしているでしょう。
住民税を会社側が徴収しなくてもよいケースもありますが、技能実習生には当てはまらないことがほとんどです。

  • 事業所の総従業員数が2人以下の事業所
  • 他の事業所から特別徴収されている
  • 給与が少ないので天引きできない
  • 給与の支払いが不定期の場合
  • 退職した人
  • 5月末日までに退職を予定している人

しかし、義務とはいえ会社による天引きが徹底されていないケースもあります。
天引きされた住民税は会社が支払うのですが、市町村ごとに納付処理はバラバラで事務負担が大きいためです。
給料から住民税が天引きされない会社の従業員は、市町村から送付されてくる納付書を使って、コンビニなどで支払うことになります。
住民税は技能実習生によっては年額10万円程度になるでしょう。
納付書の意味がよくわからずに未払いになっているケースもあります。
住民税の支払いがされていない場合には「給料等の調査について」という手紙が会社宛に送られてくることがあります。
これは市町村が給料を差し押さえるための準備です。

ただし、送られてくる手紙には送られてきた理由は書かれていません。
会社担当者としては技能実習生に「心当たりはないか?」と確認するところから始まるでしょう。
技能実習生本人には手紙に書かれている役所の電話番号に連絡するように指示し、理由を確認しましょう。
そして、技能実習生に住民税を支払うように話をしましょう。

自動車税を滞納していた場合


住民税と同じく市町村から「給料等の調査について」という手紙が来た場合に多いのが、自動車税の滞納です。
会社が住民税を天引きしているのに、手紙が来たらこのケースかもしれません。
技能実習生が自動車を所有する例は少ないですがゼロではありません。
職種によっては運転が求められるので日本の運転免許証を保有していることもあります。
自動車がないと生活がしにくい環境も少なくありません。
また、会社に黙って日本で中古車店を営む同じ故郷の定住者から、格安で買っているというケースも実際にあります。
また同郷の仲間が車を所有していて、登録名義が技能実習生だったので納付書が来ていたというケースも。
市町村からの手紙をきっかけに技能実習生に事情を聞いてみると、想像もしていなかった状況に発展していることもあります。

対応方法は住民税と同じです。
まずは手紙に書かれている窓口に連絡をさせて、理由を確認しましょう。
そして、技能実習生に未納分を支払うように話をしましょう。
国によっては徴税が適当で、技能実習生も税金を軽く見ていることがあります。
日本では支払わないとペナルティも大きいことを説明しましょう。

税金が正しいか確認したい場合


会社が年末調整を行い1~12月の給料を確定させると、その情報は市町村の住民税を処理する部署に送られることになります。
そこでは会社が提出した情報と、他の情報を照合して不自然なものがないかをチェックもしています。
市町村が技能実習生の情報を見て疑問を持ちやすいのは「扶養の有無」です。
所得税には扶養控除があり、扶養控除が使えれば技能実習生が支払う税金は減ります。
例えば、収入が103万円以下の親族を扶養している場合には原則38万円控除ができます。
19歳~23歳未満なら63万円、70歳以上の親族であれば48万円と優遇されています。
「技能実習生は日本に1人で来ているのでは?」と思ってしまいますが、扶養控除は母国にいる家族もカウントに入れることができます。
しかし、市町村は海外にいる人の情報を手に入れることはできません。
そこで本当に家族がいるのか、扶養しているのか確認する必要がでてきます。
そこで会社に手紙が送られてくるわけです。

扶養家族のパスポートのコピー、戸籍謄本、婚姻証明書を証明など技能実習生との関係性を証明できるものが求められ、扶養している親族に送金したか確認できる明細も必要です。
基本的に日本人よりも厳しめにチェックされます。
会社としては技能実習生に追加で資料提出を求める必要があるでしょう。
例えば、送金は家族全体にではなく、扶養対象となる1人1人にバラバラで送らなければ「確認できない」として、認められないこともあります。
国によっては銀行口座を持てるのは一家に一口座と限られていることもあり、口座名義人のみが対象とみなされ扶養家族を減らされてしまったのです。

お金を返済していない場合


裁判所からくる手紙で多いのは「給与差押さえ通知」です。
今までの例は住民税などの「照会」でしたが、裁判所からの場合は既に実行されています。
理由としてはクレジットカードを使ったり、友人などから借りたのに返済しなかったりするケースが多いでしょう。
母国の文化にもよりますが、技能実習生は「助け合い」や「上が面倒を見る」という価値観が日本より強いことが多いです。
自分が借金をしてまで母国の家族や日本にいる知人を助ける…なんてことも珍しくはありません。
問題なのは返済のことを深く考えていない場合があることで、最終的に裁判所の給与差押さえ通知となって会社が知ることになるのです。
給与差押えの通知が来ても法的には会社が悪いわけではありません。
技能実習生の借金を会社が負担する必要もありません。
会社が求められていることは、技能実習生の給料を技能実習生に貸している人(債権者)に支払うことです。
裁判所としては、技能実習生は会社に「給料という債権」を持っているので、「給料という債権」を技能実習生の債権者に渡せば、技能実習生の債務は消えて解決するという考え方をしています。
給与の差押えは請求された金額に達するまで行われます。
ただし、給料全額では技能実習生が生活できないので手取り額の1/4までと制限がされています。
例えば技能実習生の手取りが16万円なら差押えられるのは4万円です。
技能実習生の手元に残るのは12万円ということになります。

次の問題として技能実習生が3/4で生活できるかという問題がでてきます。
「技能実習生がやったことだから会社は知らない」と何もしないと失踪という結末もありえます。
借金を会社が支払う必要はなくても、負担を軽減するための対応はしたほうが良いでしょう。
もし、技能実習生が失踪して退職処理となった場合は、債権者は給料を差押えることができないので、会社に対する請求を取下げることになるのが一般的です。

まとめ


おもわずドキッとしてしまう行政や司法からの手紙は、給料の照会や差押えについての内容が多いでしょう。
技能実習生への事前教育や準備によって避けることができることも少なくありません。
さらに、技能実習生が困ったことがあれば簡単なことでも相談できる体制や雰囲気作りも大切です。
ふれんど協同組合では豊富な実績と経験でイレギュラーのときでも、しっかりとしたフォローを行っています。
もし技能実習生・特定技能制度へのご相談や関心がありましたら、まずはお気軽にお電話またはメールフォームから問合せください!