技能実習の成否の要、「技能実習指導員」とは?

2022年6月7日   ブログ

技能実習生の実習を指導をするのが「技能実習指導員」です。
技能実習生を雇用した企業は必ずこの技能実習指導員を置かなくてはいけません。
技能実習指導員は、実習生に業務を教える「先生役」ですから、非常に重要です。
実習生に安心して長く働いてもらえるかどうかは、適切な指導員を用意できるかどうかにかかってるといっても過言ではありません。

そこで今回は、技能実習指導員になるための条件、また、指導員になるにはどのようなことを学んでおくべきなのかについてお伝えします。

 

 

1 技能実習指導員になるための条件

指導員には誰でもなれるわけではなく、条件が定められています。
その条件には、「そうでなければいけない」条件と、「そうであってはいけない」条件の2種類があり
そのどちらも満たしている必要があります。
少しややこしいですね。
具体的に見ていきましょう。

まず、「そうでなければいけない」条件とは次の2点です。

  1. 実務経験が5年以上の者
  2. 技能実習を行わせる事業所に所属する者

5年以上、その業務に携わった経験があり、現在その会社で働いている人、ということです。
なお、「5年以上の実務経験」というのは、現在の会社以外での経験も含まれます。

 

では次に「そうであってはいけない」条件を見ていきましょう。
上記2点を満たしていても、下記3点に該当する場合は指導員になれません。

  1. 未成年者
  2. 法第10条第1号から第7号まで又は第9号のいずれかに該当する者
  3. 過去5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者

 

②の法第10条については様々な項目がありますが、例えばこういうものがあります。

  • 禁固以上の刑に処せられ、その執行が終了してから5年以上経過していない者
  • 心身の故障により技能実習に関する業務を適正に出来ない者として主務省令で定める者

つまり、心身健康で、③同様、法を犯していない者ということになります。

また、実習が複数の職種に及ぶ場合、それぞれに指導員が必要です。

ただし、1人の職員で該当職種全てに対し、上記要件を満たす場合、指導員はその職員だけで構いません。

 

(ワンポイントアドバイス)
介護職種の場合は上記に加え、下記の3点いずれかに当てはまること、という追加の条件が設けられています。

  1. 介護福祉士の資格を有すること
  2. 看護師または准看護師の資格を有すること
  3. 実務者研修を修了していることです(実務者研修修了者は8年以上の経験が必要)

 

 

2 技能実習指導員を置く目的

技能実習指導員を置く1番の目的は、実習を適切に行うためです。
当たり前のことのようですが、この当たり前が行われず、実習生を安い労働力とみなし、実習内容とは関係のない、単純労働をさせる企業もあります。

まさにそうした企業において、「実習を適切に行う」よう指導するのも、指導員の役目になります。
制度の形骸化を防ぎ、意義ある実習が計画通り行われるために、必要不可欠な存在というわけです。
特に、危険の伴う作業では、指導員による安全面の指導が実習生を守ることになります。

 

 

3 技能実習指導員育成のための講習

様々な団体が定期的に、技能実習指導員を育成するための講習を開いています。
講習受講は指導員になるための必須条件ではありませんが、受講することで制度や実習生について深く知れ、結果的により良い指導を行えるようになります。
講習時間はおよそ5時間半ほどで、3年おきの定期的な受講が推奨されています。

また、優良な実習実施者※となるためには、一定の点数を獲得する必要がありますが、この講習の受講はその加点要素の1つとなっています。
つまり、講習を受講させることは企業にとってもプラスになるということです。

 

(ワンポイント用語解説)
※優良な実習実施者とは…実習生受け入れ企業として外国人技能実習機構より「優良」
の認定を受けることで、受け入れ人数の拡大など様々なメリットがあります。

 

3-1講習内容

講習内容は主に以下の5点となります。
その後、理解度テストに合格すると受講証明書が貰えます。

①法律について

実習を適切に実施するための法律や、実習生保護のための法律を学びます。
具体的には労働基準法や労働関係法令になります。
実習現場で不正と思われることが行われていた時などに、法律を根拠にジャッジできれば判断にブレがなくなり、指導の説得力も増します。

②指導方法について

実習生を指導する際、どういったことに注意すれば良いかを学びます。
言葉の壁もあるため、指示は作業ごとに細かく丁寧に出す必要があります。
そういったコツやポイントについて学びます。

③実習生との向き合い方について

指導員は、ただ上から指導するだけでなく、実習生と密にコミュニケーションを取り、彼らから信頼される必要があります。そうでなくては指示にも従ってもらえません。
そうした実習生との向き合い方について学びます。

➃労働災害防止と労働災害時対応について

残念なことに、毎年実習生の労働災害が多数発生しています。
その数は、日本人の従業員の2倍ともいわれています。
そうした実習生の労災を防ぐためにも労働災害防止と労働災害時対応について学び、指導員が率先して、安全な労働環境を構築する必要があります。

もし万一、実習中に労災が起きてしまったら、実習生を病院に連れて行くのはもちろん、速やかに労働基準監督署に労働者死傷病報告を行いましょう。
怠ると「労災隠し」の疑いをかけられてしまいます。あわせて、労災保険の給付申請も必要です。

⑤理解度テスト

講習の最後に理解度を測るテストが行われます。
このテストで70点以上取ると受講証明書が発行されます。
70点未満の場合は、別日に再試験となります。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は技能実習指導員について解説しました。
実習を安全かつ順調に進めるためには指導員の育成が欠かせません。

ぜひ今回の記事を参考に、講習を受けさせるなど、指導員のレベルアップに力を入れてみてください。