技能実習生の受入れ事業所は中小企業が多いと言われています。
一方で、技能実習制度は複雑で役所に提出する書類も膨大なので、一人の社員がいくつもの業務を兼ねることも多い中小企業ではカバーすることはできません。
その問題を解決してくれるのが国家資格を持つ行政書士や社会保険労務士。
見分けの付きにくい2つの専門家の違いや役割を学んでいきましょう。
行政書士とは?
全般的な法律の専門家です。
刑事事件やトラブルに対応する弁護士と比べると、身近で実務的な法律を扱います。
依頼を受けて国の各種窓口、県や市町村の役所、警察署などに書類作成して提出するのが行政書士の役割です。
年々、規制や支援するしくみが増える一方で、申請するのに求められる知識も増加しています。
行政書士は「申請をしたのに役所が受理してくれない…」という場合に、どうやって対応すればよいかの知識を持っています。
自動車を購入するときの車庫証明のような身近な手続きから、相続や遺言、会社の設立など幅広い分野をカバーしているのも行政書士の特徴です。
社会保険労務士とは?
社会保険労務士とは労働関係、健康保険、年金制度の専門家です。
ハローワーク、年金事務所、健康保険組合などに提出する書類の作成・提出を行います。
給料計算などの事務支援も業務のうちです。
会社と従業員とのトラブルを未然に防ぐアドバイスも行います。
行政書士と社会保険労務士の違いとは?
行政書士は民法や行政手続きに関する法律の専門家です。
身近なもの、企業経営に関わるもの、人生に関わるものなど多岐に渡ります。
一方、社会保険労務士は働くことと医療・年金に特化しています。
会社員にとっては自分の年金手続きなどをしてくれる存在ですが、生活の上であまり関わる機会は少ないかもしれません。
技能実習制度との関係は?
行政書士との関わりは深い
技能実習制度では行政書士のほうが社会保険労務士より密接な関係があります。
技能実習生が日本に入国して生活する上でさまざまな許可や届出が必要だからです。
まず入国するためには技能実習ビザが必要で、定期的に更新も必要です。
ビザ関係の手続きでは申請者が申請書の提出時に管轄の出入国在留管理局などに出頭しなければならないことがありますが、一定の研修を受けた行政書士であれば申請者が出頭することなく手続きすることもができます。
技能実習制度で用意する書類には定款など企業そのものについても必要です。
行政書士は会社設立に関する業務もカバーしているため、必要な書類が不足していたり不備があったりした場合でもスピーディーに対応することができます。
雇用についての相談は社会保険労務士
▲厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和3年)」より
技能実習生とのトラブルでもっとも多いのは賃金や待遇に関するものです。
労働局や労働基準監督署も1位の「安全衛生」と「働かせ方」が問題となっています。
令和3年に技能実習を行うための認定を取消された受入れ事業所の数は、なんと約150も。
その半数以上が労働衛生と働かせ方が原因とされています。
出典:出入国在留管理庁 公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)より
https://www.moj.go.jp/isa/content/930006259.xlsx
技能実習を円滑に行うためには適法に労務管理を行う必要があります。
しかし、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法のように法律は膨大。
中小企業単独では対応しきれない場面も少なくありません。
気づかないうちに違法状態であったということを防ぐためにも、社会保険労務士にチェックやアドバイスを受けることも必要です。
労働時間、管理方法、就業規則など全体の見直しするきっかけにもなるでしょう。
行政書士や社会保険労務士のできないこととは?
原則として技能実習生と受入れ事業所のトラブルを直接解決することはできません。
とくに調停や裁判のような場面では弁護士が担当します。
税金分野については行政書士や社会保険労務士でも一般的な説明までで、具体的な業務は税理士の出番となります。
それぞれ得意分野が異なるため連携して対応する形をとることが多いでしょう。
失敗しない行政書士や社会保険労務士の見分け方は?
共通して言えることはフィードバックの早さです。
両資格とも基本的な仕事は「事務業務」。
依頼したことや質問した内容がいつまで経っても何の反応もないのは資質に欠けるでしょう。
サービス範囲などが記載された契約書や料金表をすぐに提示できない場合も疑問が残ります。
労働基準法や年金保険法では技能実習生と日本人労働者との差は無いので、技能実習制度専門の社会保険労務士である重要度は高くありません。
しかし、行政書士は申請取次事務研修を受けていなければ代理できないことがあります。
技能実習制度では手続きが難しいものが多いため、技能実習制度に対応している行政書士を探す必要があります。
とは言え、監理団体を通して手続きを行ったり、行政書士を紹介してくれたりするケースも少なくありません。
まずは監理団体に相談するのが近道でしょう。
まとめ
複雑な在留資格や労働問題に対応するには専門家の力が必要です。
技能実習制度では行政書士や社会保険労務士の力を借りる場面が少なくありません。
とくに行政書士は技能実習生の在留資格に関係する手続きを扱います。
監理団体が窓口になることも多いので安心ですが、自分でもどんな人が手続きをしてくれるか確認してみましょう。
ふれんど協同組合ではビザ取得など受入れ事業所が馴染みの薄い手続きもしっかりサポートして、スムーズな技能実習を実現します。
もし技能実習生・特定技能制度へのご相談や関心がありましたら、まずはお気軽にお電話またはメールフォームから問合せください!