「人手不足倒産」という言葉が、中小企業にとって無視できない経営課題になっています。
帝国データバンクが公表した調査では、2025年度の人手不足倒産は441件となり、3年連続で過去最多を更新しました。
なかでも建設業は112件で、全体の25.4%を占めています。人手不足倒産・中小企業・建設業をめぐって、今どのようなことが起きているのか。最新の公表データをもとに整理し、三重県の中小企業経営者の皆様と人材確保について考えていきます。
2025年度の人手不足倒産は441件|3年連続で過去最多

人手不足そのものは以前から企業経営の課題として語られてきました。しかし現在は、「採用が難しい」という段階を超えて、人材を確保できないことが事業継続に影響するケースが顕在化しています。まずは最新の数字から現状を確認してみましょう。
2025年度は441件、3年連続で過去最多
帝国データバンクが公表した「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」によると、2025年度に発生した人手不足倒産は441件でした。年度ベースで3年連続の過去最多となっています。
ここでいう人手不足倒産とは、従業員の退職や採用難など、人材不足が事業継続に影響した倒産を指します。
経営者の立場から見ると、「仕事がないから事業を続けられない」のとは異なる点に注目する必要があります。仕事や受注機会があったとしても、それを担う人材を確保できなければ、事業を十分に動かせないことがあります。
特に中小企業では、一人ひとりが担う業務の幅が広く、経験を持つ従業員の退職が現場全体へ大きな影響を与えることも少なくありません。
441件という数字だけを見て不安になる必要はありませんが、人材確保が「採用部門だけの問題」ではなく、経営そのものに関わるテーマになっていることは意識しておく必要があるのではないでしょうか。
正社員不足を感じる企業は今も半数を超える
倒産件数とは別に、企業がどの程度人手不足を感じているのかを見るデータもあります。
帝国データバンクが公表した2026年1月時点の調査では、正社員の人手不足を感じている企業の割合は52.3%でした。1月としては4年連続で半数を超えています。
さらに、2026年4月時点の調査では、正社員の人手不足を感じている企業は50.6%でした。1月の52.3%からはやや低下していますが、4月として4年連続で半数を超えています。
つまり、数字だけを見れば多少の改善は確認できますが、「人手不足が解消した」と言える状況ではありません。
企業によって状況は大きく異なります。しかし、日本企業全体で見れば、正社員不足を感じる企業が依然として半数を超えているという事実は、人材確保を中長期の経営課題として考える必要性を示しているのではないでしょうか。
建設業が4件に1件|高齢化と若手不足のダブルパンチ

2025年度の人手不足倒産のなかでも、特に大きな割合を占めたのが建設業です。建設業は、単に「求人への応募が少ない」というだけではなく、技能を持つ人材の高齢化と、若い世代の不足という二つの課題が重なっています。
建設業の人手不足倒産は112件、全体の25.4%
帝国データバンクが2025年度の調査では、人手不足倒産441件のうち、建設業が112件を占めました。割合にすると25.4%で、およそ4件に1件です。
もちろん、この数字だけを見て「建設業は危険だ」と単純化することはできません。
一方で、建設業では施工に必要な技能や経験を持つ人材が欠かせません。ベテラン社員が退職したからといって、その翌日から未経験者が同じ仕事を担えるわけではないという難しさがあります。
採用だけではなく、採用した人材を育て、技能を継承する時間も必要です。
人材不足が長期化するほど、「採用できるかどうか」と「育成できるかどうか」を同時に考えなければならない企業が増えているのではないでしょうか。
60歳以上は約4分の1、29歳以下は約12%
一方、建設業の技能者の年齢構成については、国土交通省が公表している資料によると、60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%とされています。
この年齢構成を見ると、建設業の人手不足が単なる一時的な採用難ではないことが分かります。
経験豊富な技能者が今後順次引退していく可能性がある一方、その技能を引き継ぐ若い世代の割合は限られています。
企業にとっては、「今年の求人をどうするか」だけではなく、数年後に誰が現場を支えているのかという視点も必要になっているのではないでしょうか。
特に中小企業では、長年現場を支えてきた一人の職人や技術者が持つ技能が、会社にとって非常に大きな財産になっている場合があります。
その技能を誰に、どのように引き継ぐのか。人手不足対策は採用だけではなく、技能継承の問題でもあると考えられます。
外国人材も「採用すれば終わり」ではない
建設業の人材不足については、「外国人材を採用すればよいのではないか」と考える企業様もいるかもしれません。
しかし、それほど単純な問題ではありません。
外国人材を受け入れる場合にも、日本語、専門技能、職場でのコミュニケーション、生活環境への適応など、育成と定着のための準備が必要です。
つまり、日本人の若手を採用する場合であっても、外国人材を受け入れる場合であっても、「人を採れば解決する」のではなく、「採用した人をどう育て、どう働き続けてもらうか」という視点が欠かせないのではないでしょうか。
建設業だけではない|運輸・介護でも深刻化する人手不足

人手不足倒産が目立っているのは建設業だけではありません。人による業務やサービスが欠かせない業種では、人材確保の難しさが事業運営へ直接影響しやすい傾向があります。
道路貨物運送業でも人手不足倒産が過去最多
帝国データバンクが公表した2025年度の調査では、ドライバー不足や高齢化が課題となっている道路貨物運送業でも、人手不足倒産が業種別で過去最多を更新しています。
物流は、荷物を運ぶ人がいなければサービスそのものを提供できません。
設備やシステムによる効率化を進められる部分はあっても、人が担わなければ成立しない仕事は残ります。
これは建設業にも共通しています。
デジタル化や設備投資によって生産性を高めることは重要ですが、すべての仕事を人から置き換えられるわけではありません。
「採用」と「効率化」のどちらか一方を選ぶのではなく、両方を組み合わせながら人材戦略を考える必要性が高まっているのではないでしょうか。
老人福祉事業でも過去最多を更新
同じ2025年度の帝国データバンク調査では、介護を含む老人福祉事業でも人手不足倒産が業種別で過去最多となっています。
介護も、人と人との関わりが不可欠な仕事です。
ふれんど協同組合では、外国人技能実習生について実際に受け入れ・教育・定着支援の実績があるのは、現時点では介護分野です。
その経験から見ても、外国人材を受け入れれば人手不足がそのまま解決するわけではありません。
受け入れる前の日本語教育、仕事内容への理解、配属後のコミュニケーション、職場側の受け入れ体制など、事前と事後の両方で準備が必要です。
外国人材について考える場合も、「採用人数」だけで判断するのではなく、「育成できる体制があるか」という視点が大切になるのではないでしょうか。
共通しているのは「人がいなければ事業を維持しにくい」こと
建設、運輸、介護には業務内容に大きな違いがあります。
ただ、共通しているのは、人が現場で担う役割が非常に大きいということです。
人材が不足すれば、一人当たりの負担が増える。負担が増えれば、さらに採用や定着が難しくなる。そのような循環に入ると、経営者が求人媒体を変えるだけでは解決しにくくなります。
だからこそ、人手不足を「採用担当者の問題」と考えるのではなく、会社の事業計画や教育体制まで含めて考えることが必要になっているのではないでしょうか。
この数字をふれんど協同組合はどう見ているか

ここまでは、帝国データバンクや国土交通省などが公表しているデータを中心に見てきました。ここからは、人材業界に16年間関わってきた経験を持つ視点から、数字の背景にある変化について考えてみたいと思います。
「求人を出せば応募が来る」という前提が変わっている
人材業界に長く関わっていると、採用環境は少しずつ変化してきたと感じます。
以前であれば、「求人を出す」「条件を見直す」「募集媒体を増やす」といった方法で応募を増やすという考え方が中心でした。
もちろん、今でも求人の出し方や条件設定は重要です。
しかし、正社員不足を感じている企業が2026年4月時点でも50.6%あるという状況を見ると、企業同士が同じ人材を採用しようとしているだけでは、採用課題を解決しにくくなっているのではないでしょうか。
採用方法を改善するだけではなく、「誰を採用するのか」「どう育てるのか」「どう長く働いてもらうのか」まで考える必要がある時代に入っているように感じます。
「採用できない」ではなく、選択肢そのものを広げて考える
人手不足が続くと、「求人を出しても応募がない」「若い人が来ない」と考えてしまいがちです。
しかし、少し視点を広げると、人材確保には複数の方法があります。
日本人の新卒・中途採用を続けること、若手社員を育成すること、シニア人材が活躍しやすい働き方を考えること、業務効率化によって必要な業務量を減らすこと。そして、外国人材の受け入れを検討することも、その一つです。
どれか一つが正解ということではありません。
自社の仕事内容や将来計画に合わせて、複数の選択肢を組み合わせていくことが、これからの中小企業の人材戦略では重要になるのではないでしょうか。
人を採って終わりではなく、育てて定着してもらう
採用市場が厳しくなるほど、「採れたら成功」と考えたくなります。
しかし本当に重要なのは、その後です。
採用した人が仕事を覚え、技能を身につけ、会社の中で役割を持ち続けてもらえる状態を作らなければ、採用活動を何度も繰り返すことになります。
これは日本人採用でも外国人材でも同じです。
外国人材の場合には、仕事そのものに加えて日本語や生活面での支援も必要になります。
ふれんど協同組合では教育面について一般社団法人KJKと連携していますが、こうした教育の考え方も、「人材を確保すること」と「人材を育成すること」を別々に考えないための一つの取り組みです。
人材不足が続く時代だからこそ、採用と育成、定着を一つの流れとして捉える必要があるのではないでしょうか。
人手不足への向き合い方は一つではない

人手不足倒産が過去最多になったからといって、すべての企業が同じ対策を取る必要はありません。大切なのは、自社でなぜ人が不足しているのかを整理し、利用できる選択肢を知っておくことではないでしょうか。
まずは自社の「人が足りない理由」を整理する
同じ「人手不足」という言葉でも、企業ごとに原因は違います。
そもそも応募が来ないのか。応募はあるものの採用まで至らないのか。採用できても定着しないのか。ベテラン社員の退職が近づいているのか。
原因によって考えるべき対策は変わります。
求人広告だけを増やせばよい企業もあれば、働き方や教育体制そのものを見直した方がよい企業もあるでしょう。
まず自社の人手不足がどこから生じているのかを整理することが、次の一手を考える出発点になるのではないでしょうか。
外国人材の受け入れも選択肢の一つ
外国人材は、人手不足を解決するための唯一の答えではありません。
日本人採用、若手育成、シニア人材の活用、業務効率化などと並ぶ選択肢の一つです。
一方で、日本国内だけで採用を考えてきた企業様にとっては、これまで検討していなかった新しい採用方法になる可能性があります。
重要なのは、「人が足りないから外国人を採用する」という短期的な発想だけで判断しないことです。
誰にどの仕事を担当してもらうのか。どのような教育が必要なのか。配属後に誰が支援するのか。
そこまで含めて考えたうえで、自社に合う選択肢なのかを判断することが大切ではないでしょうか。
ふれんど協同組合ができること
ふれんど協同組合は、組合員企業により運営される協同組合です。
現在、農業・製造業・介護・建設・自動車整備の5業種が組合員企業として加盟しています。
なお、外国人技能実習生について実際に受け入れ・教育・定着支援の実績があるのは、現時点では介護分野のみです。農業・製造業・建設・自動車整備について、すでに受け入れ実績があるということではありません。
ふれんど協同組合では、一般社団法人KJKと教育面で連携しながら、外国人材の受け入れについて企業様と一緒に考えています。
「外国人材を受け入れると決めたので手続きをしたい」という段階だけでなく、「将来的な選択肢として知っておきたい」「自社の業種で検討できるのか聞いてみたい」という段階でもご相談いただけます。
人手不足倒産・中小企業の人材確保に関するよくある質問
Q. 人手不足倒産とはどのような倒産のことですか?
A. 従業員の退職や採用難など、人材不足が事業継続に影響して倒産に至るケースを指します。帝国データバンクが2026年4月9日に公表した調査では、2025年度の人手不足倒産は441件となり、3年連続で過去最多を更新しました。
Q. 建設業が特に深刻といわれるのはなぜですか?
A. 帝国データバンクの2025年度調査では、人手不足倒産441件のうち建設業が112件、25.4%を占めています。建設技能者の60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%とされています。
Q. 人手不足倒産は今後も増えていくのでしょうか?
A. 将来の倒産件数を正確に予測することはできません。帝国データバンクが2026年5月19日に公表した2026年4月時点の調査では、正社員の人手不足感は50.6%と1月時点よりやや低下していますが、4月として4年連続で半数を超えています。
Q. 人手不足への対策にはどのようなものがありますか?
A. 日本人採用、若手人材の育成、シニア人材の活用、業務効率化、外国人材の受け入れなど、さまざまな選択肢があります。一つの方法だけに決めるのではなく、自社の人手不足の原因に合わせて組み合わせて考えることが重要ではないでしょうか。
Q. 外国人材の受け入れについて相談できますか?
A. はい。ふれんど協同組合では、三重県内で外国人材の受け入れを検討している企業様からのご相談を受け付けています。まだ具体的な採用計画が決まっていない段階でもご相談いただけます。
人手不足・外国人材の受け入れについてはふれんど協同組合へご相談ください
帝国データバンクが2026年4月9日に公表した2025年度調査では、人手不足倒産が441件となり、3年連続で過去最多を更新しました。また、2026年4月時点でも正社員不足を感じる企業は50.6%と、半数を超える状態が続いています。
こうした数字を見ると、人手不足は「求人を出せば何とかなる」という短期的な問題ではなくなりつつあるのではないでしょうか。
だからといって、この記事の結論が「外国人材を受け入れましょう」ということではありません。
日本人採用を強化する企業もあれば、若手の育成に力を入れる企業もあります。シニア人材の活躍を考える方法もあれば、設備投資や業務効率化によって必要な人員そのものを見直す方法もあります。
外国人材の受け入れも、そのなかの一つの選択肢です。
大切なのは、人手不足がさらに深刻になってから慌てて考えるのではなく、「自社にはどのような選択肢があるのか」を早めに知っておくことではないでしょうか。
ふれんど協同組合は、組合員企業により運営される協同組合として、三重県内の企業様から外国人材受け入れに関するご相談を承っています。
「まだ受け入れるかどうか決めていない」
「外国人材について基本的なことだけ聞いてみたい」
「自社の業種ではどのような準備が必要なのか知りたい」
そのような段階からでも、お気軽にお問い合わせください。
ふれんど協同組合
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