技能実習生の活躍の場は年々広がっています。
特に慢性的な人手不足が続く建設業では貴重な戦力として見られており、中には高い技術力を身に着けている実習生もいます。
そんな建設業での技能実習生の受け入れと、建設キャリアアップシステムへの登録は関係があるのを知っていますか?
今回は建設キャリアアップシステムへの登録義務化についてご紹介します。
建設キャリアアップシステムとは
「建設キャリアアップシステム」は、建設業がいま一体となって導入に取組んでいるシステムです。
建設業は他の産業と比べて賃金の上昇が早いという特徴がありますが、一番お金が必要となる40代頃からの伸びが弱く、労働者としては将来を見通しにくいという感覚が生まれやすい傾向がありました。
また、他の産業とは違い、様々な会社や現場で経験を積んでいく事が多いため、業界として統一された技能者の評価がされにくく、高い技術力を持っていたとしてもスキルに応じた待遇を得られないという課題があります。
そこで、技能者の就業記録、経験年数、保有資格などをICカードに記録をし、業界統一の基準でスキルを評価することで技能者の処遇向上を図り、また将来のキャリアを描きやすくすることを目的にしています。
建設キャリアアップシステムにはスキル面だけではなく、社会保険の加入状況の確認機能、国の退職金制度との連動など複合的に労働者を育てていく制度となっています。
現在、一般企業には加入は義務ではありませんが、国・地方公共団体や大手ゼネコンやハウスメーカーを中心に積極的に取組んでおり、義務化への流れは進んでいます。
外国人を受け入れる事業者は義務!
建設キャリアアップシステムは令和2年1月以降に技能実習生を受入れる企業にあたっては義務化されることになりました。
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo14_hh_000846.html
なぜ建設業だけなのでしょうか?
それは建設分野での技能実習生の失踪者数が最多であり、実効性のある対策が必要とされたからです。
建設業は季節によって受注量の変動が激しく、働く場所も点々としています。
賃金も月々で安定しにくく、収入面での不満も高くなりがちです。
特に技能実習生を安価な労働力として利用する企業も多く、劣悪な環境におかれ適切な就労管理がされない技能実習生が多いという現状があります。
それに対して、建設キャリアアップシステムは、日々現場ごとに労働の記録が保存され、社会保険状況なども連動をするようになっているため技能実習生の保護にも繋がると考えられているのです。
技能実習生を受入れるにあたって必要な「技能実習計画」の項目には、受入企業と技能実習生が建設キャリアアップシステムに登録されているか確認が盛り込まれています。
技能実習計画の認定を行う外国人技能実習機関は、建設キャリアアップシステムへの登録確認ができなければ認定を行わず、企業は実習生を受入れることができません。
さらに、技能実習の受け入れ基準には賃金を「日本人と同等以上」で「安定的に支払うこと」が加えられることになっています。
安定的に支払うとは「月給制」を義務とすることであり、建設分野での技能実習生の保護に繋がっています。
多くの建設現場で建設キャリアアップシステムを利用しないと働けない環境が広がることは、不当滞在者や失踪した技能実習生、在留資格ではない活動を行う外国人を不当に雇う雇用主を排除することにも繋がり、建設業全体を健全にするという役割も期待されています。
技能実習生の登録方法
技能実習生の建設キャリアアップシステムへの登録方法は、日本人と外国人で異なっているものもあるので注意が必要です。
外国人の場合は本人の確認書類として、在留カードまたはパスポートと住民票の写しが求められています。
その他、社会保険などの各種加入の証明として以下のものが必要です。
- 健康保険被保険者証や国民健康保険被保険者証の写し
- 年金関係としては、厚生年金加入の場合は健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬月額決定通知書など加入が証明できるもの、国民年金に加入している場合は年金手帳の写し
- 雇用保険は雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)の写し
- 建退共に加入している場合には、建設業退職金共済手帳の写し
- その他、技能講習修了証などの写し
建設キャリアアップシステムのメリット
建設キャリアアップシステムは外国人技能実習生を守るだけではなく、企業側にもメリットがあります。
1つは経営事項審査の加点項目に影響がある点で、優秀な技能者を多く雇用していることが技術力として評価されることになります。
今までは施工管理技士など技術者が重視されていていましたが、幅が広がることになります。
これらは公共工事などの入札の場面などで徐々に実感してくるのではないでしょうか。
もう1つは事務作業の負担軽減です。
建設キャリアアップシステムによって、建退共など退職金制度の処理が軽減すると見込まれています。
また、作業員名簿の作成など現場ごとに発生する処理も自動的な処理がされるでしょう。
採用活動の面でも、労働者にとって建設キャリアアップシステムを導入している企業は「安全」であり、将来の待遇改善も期待できると判断するようになるはずです。
まとめ
現在、建設キャリアアップシステムの加入は義務ではありませんが、技能実習生を雇用する企業では義務とされています。
その背景としては、他の産業と比べて高い技能実習生の失踪への対策があります。
しかし、建設キャリアアップシステムは企業全体の競争力向上としてもメリットがあると言えます。
技能実習生の受け入れをきっかけとして、建設キャリアアップシステムに力を入れてみてはいかがでしょうか。