初めて技能実習生を受け入れる時は、企業側も色々と不安があるでしょう。
そこで今回は、技能実習生を受け入れることで起こり得る3つの代表的なトラブルとその対策をお伝えします。
1 失踪
技能実習生の失踪は、彼らを巡るトラブルの中で最も深刻なものです。
原因は様々ですが、どれも根本には「お金」と「労働環境」の問題があります。
お金の問題でいえば、やはり賃金の安さが挙げられます。
日本へ渡るための送り出し機関から聞いていた額と、実際に受け取れる額が違っていたということもよくあります。
あるいは、賃金の額に齟齬がなかったとしても、彼らは送り出し機関に多額の手数料を借金という形で支払って日本へ来ています。
その上、彼らのほとんどが母国の家族へ仕送りもしています。
つまり、彼らは生活費とは別に借金と仕送りのお金も賃金から捻出しなくてはいけないわけです。
ですから仮に契約通りの賃金をもらっていたとしても、それだけでは足りないこともあります。
そのため、知り合いなどから「上手い儲け話」を持ちかけられると、そちらで働いた方が稼げると思い、失踪してしまうことがあります。
そしてそういった「儲け話」は往々にして何らかの犯罪と結びついているものです。
企業側としては何も逃げなくても、と思うかもしれませんが、転職が認められていない彼らにとって
日本で他の職に就くには実質逃げるしか手段が残されていないのも現実です。
彼らが失踪するもう1つの大きな理由が労働環境です。
これも聞いていた内容と違っていた、思ったより辛かった、などの理由から逃げてしまうというわけです。
また、近年でもたびたびニュースになっていますが、日本人の従業員や上司からのパワハラ、セクハラが横行している場合もあります。
こうした社内のハラスメントは日本人の間ではだいぶコンプライアンス遵守の意識が高まってきました。
にもかかわらず、外国人である彼らに対しては依然として不当な扱いがなされる現状は、個々の企業にとって問題であるだけでなく
日本人としても恥ずべきことです。
これでは、外国人技能実習制度で日本が目指す「国際貢献」も成しえません。
【対策】
上記のような失踪が起きてしまう原因として、コミュニケーション不足と従業員への教育不足が挙げられます。
まずコミュニケーションを取るということで言えば、社内に実習生の相談窓口となる部署を置き、相談しやすい体制を作ることです。
相談窓口となる部署は彼らが働く部署とは独立しており公平性が保てるもので、彼らの母国語を話せる社員が担当すると良いでしょう。
その上で、賃金についての不満や認識の齟齬は、企業としての認識をしっかり示しましょう。
その際、口頭での説明だけでなく、契約書などを見せると説得力が増します。
そもそも、こうした齟齬が起こらぬよう、雇用契約の段階で認識を擦り合わせておこくことが大切です。
そのためにも、先程述べた契約書についても、彼らの母国語で記載されたものを用意してあげると親切です。
また、もし実習生から日本の従業員に何らかのハラスメントを受けているとの訴えがあれば、まずは事実確認をしましょう。
そして、もし事実であれば、該当の社員に謝罪させ、教育することも必要です。
ここでいう教育とは、実習生制度の意義と、ハラスメントは内容によっては暴行罪など罪に問われる可能性があることを理解させるということです。
企業が実習生に対する不当な扱いは許さないという姿勢を見せることが何よりも抑止力となります。
2 病気・怪我
大きな病気や怪我によって実習生が帰国してしまうこともあります。
これも企業・本人双方にとって残念であり、不本意なことでしょう。
【対策】
仕事上の怪我について、危険を伴う作業に関しては丁寧なフォローが必要です。
言葉の壁があることを考慮し、こちらの意図がしっかり伝わったか、実際の彼らの作業を見て問題が無いか確認しましょう。
プライベートについても、あまり不規則な生活をして体調を崩さぬよう、時にお節介といえるような生活指導も必要です。
そうした注意喚起が結果的には彼らの健康を守るのです。
そして、彼らが健康で働いてくれることは、企業にとっても有益なはずです。
3 喧嘩・ご近所トラブル
実習生はたいていアパートや寮で集団生活をしています。
慣れない日本で慣れない仕事をし、その上プライベートも集団生活でプライバシーも少ないとなるとストレスも溜まるでしょう。
結果、些細なことで実習生同士の喧嘩が起きることがあります。
時には、喧嘩がエスカレートして警察沙汰に発展することさえあります。
また、日本の生活習慣に対応できず、ゴミの出し方や騒音などで近隣住民とトラブルになることもあります。
迷惑をかけているのが自社の社員だと近隣に知られたら、企業のイメージダウンは避けられません。
しかも現代ではそうした悪い噂はネットを介してすぐ広まるものです。
【対策】
実習生同士の喧嘩については相性を見極めて相部屋のメンバーを決めましょう。
本人達の意向を聞いても良いでしょう。
また、日勤同士、夜勤同士など、生活リズムが同じ者同士を一緒にするようにしましょう。
近隣とのトラブルを避けるためには、事前の教育が不可欠です。
母国との文化や習慣の違いから、悪気なくやってしまっていることもあるので、1つ1つ丁寧に、日本で行うと非常識な行為を説明しましょう。
同時に、集団の規範を重んじ、他者に迷惑をかけることを良しとしない日本人独特のパーソナリティについても理解してもらう必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、実習生を雇い入れることで起こり得る代表的なトラブルと、その対策について解説しました。
どれも実習生と真摯に向き合い、話し合い、工夫と努力を重ねれば防げることです。
ですから問題はトラブル自体より、そうした真摯な態度で彼らと向き合う体制と意識づくりを全社的に出来るかどうかです。
実習生の雇用を検討している企業はぜひ、まずその点を考えてみてください。