【外国人技能実習生】受入企業のコンプライアンス体制を整えよう!

2021年11月24日   ブログ

技能実習生などの外国人材に関するコンプライアンス体制(法令を遵守すること)は、とても重要な課題です。

違反があった場合、技能実習生が受け入れできなかったり今受け入れている実習生の雇用継続も難しくなったりしてしまうこともあります。

そのようなことが起きないよう、受け入れ企業は「デューデリジェンス」の手法を用いて技能実習生に対して人権侵害が起きないよう調査、そして修正を行う必要があります。

 

今回は、外国人技能実習生に関するコンプライアンス体制の確立とその手法についてお話していきます。

 

法令違反についての点検

デューデリジェンスとは、企業に要求される「当然実施するべき注意義務や努力」のことです。
この手法を使って進めていくには手順があります。

 

  1. 問題を検討するための資料リストを作成する。
  2. 資料リストを元に資料を集め、内容の確認をする
  3. 関係者へのヒアリングの実施
  4. 法的問題の調査をし、対策を検討する

 

1から4までをワンセットと考えて、中間報告を行いましょう。

経営者や関係部署間で情報を共有し、デューデリジェンス担当者だけでは捉えきれない問題をさらに洗い出すことができます。

 

中間報告で不足とされた項目・内容について、資料の検討、関係者へのインタビュー、法的問題の調査・検討を、さらに踏み込んで調査を進めていきます。

 

追加の調査を盛り込んだ調査結果を作成・報告をし、一連の手順は終了します。

 

確認する資料について

確認すべき資料は通常の労務管理上必要なものをベースにし、技能実習生に関するものをプラスした内容になります。

 

通常の労務管理上必要なもの

  • 企業パンフレットや就業規則、賃金規定などの社内規定関係書類
  • 内定通知書、雇用契約書・労働条件通知書の書式
  • 労働組合に関する資料、労働協約
  • 人事制度、社内研修制度全般
  • 過去3年分の労働紛争に関する資料や労働基準監督署等からの是正勧告など

 

技能実習生に関するもの

  • 外国籍の社員の名簿、各員の在留資格認定証明、在留カードの写し
  • 外国人雇用状況報告書
  • 外国人材の採用計画
  • 既に在籍している技能実習生の技能実習計画、実習計画変更認定申請書
  • 技能実施者届出書、技能実習実施困難時届出書、実習認定取消事由該当事実に係る報告書
  • 監理団体との契約書

 

問題点の洗い出し

集めた資料によって法的な面でのチェック実施を行いましょう。

このチェック項目の半分は技能実習生以外の従業員にも適用されるものです。
デューデリジェンスによって、通常の労務分野の課題確認もできます。

 

ハラスメント防止、高齢者雇用促進、非正規労働者の雇用、育児休業など、ここ数年で改正が行われている問題もあるはずです。

技能実習生の問題だけではなく、コンプライアンス体制の1項目として、会社全体で対応する姿勢で取組むとより効果的です。

 

しかし、資料によって把握できるものは限定的になってしまいます。
規則と実際の運用に大きな差が発生しているケースが多いからです。

そこで技能実習生本人や、監督する立場の社員、同僚などにヒアリングを実施することが必須となります。

 

労務管理上の運用が適正かどうかは最も注意するべきことです。

賃金、労働時間、作業内容の逸脱については指摘されやすい項目でしょう。

 

実習内容にも注意が必要です。

実習記録に日々担当者が記入しているのに、ヒアリングをした結果、実は全く実施されていないという例もあります。

 

こういった調査の中で、法定基準を盛り込んだ手順書と実際の作業オペレーションに差あり、法基準が守られていないなど企業全体の問題に発展することもあります。

 

しかし、入国管理法とデューデリジェンスとの間で難しい点は、デューデリジェンス担当者が企業の業務内容について正確に把握できていないと難しいところでしょう。

 

例えば、実習内容は重要な在留要件の1つです。

担当者が現場業務についてまったく知らなければ、在留資格の想定する業務に適しているかさえわからないでしょう。

大企業で管理部門と現場部門の距離が離れていたり、中小企業であっても縦割り組織であったりする場合には、横のつながりが弱く、問題が発生しやすい傾向があります。

 

調査後の改善策の検討

改善策の検討をするにあたっては、問題を大きく3つに分けましょう。

 

  1. すぐに修正・改善できるもの
  2. 部門を横断している問題で、調整が必要で準備に数ヶ月程度がかかるもの
  3. 企業文化にもかかわり、解決には中長期的に取組むべきもの

 

その中に重大な違法状態で、即座に対応をしなければならないものがあれば、上記3つに分類に関係なく、最優先で対応します。

 

問題ごとに責任者を置き、一定の権限を与えて対策を進めましょう。

こういった対策は実務的には途中で自然消滅してしまいがちです。実施計画を立て、定期的な報告、フィードバックと企業の業務計画に組み込むようにすると効果的です。

 

 

まとめ

デューデリジェンスの手法により、資料集め・ヒアリング・問題点の洗い出しをすすめることがコンプライアンス体制をととのえるための第一歩です。

ただ問題点を指摘するだけではなく、それをもとに適切な受入体制を作る必要があります。

 

コンプライアンス整備は企業に変化を求める活動でもあり、変化は痛みを伴う場合もあります。
それでも定期的・継続的に実施しなければなりません。

 

こういった活動は、外国人技能実習生にはもちろん、社員全員にとって働きやすい環境に繋がります。

是非、少しずつでも取り組んでみてくださいね。