それは、目をそむけたくなる映像でした。
映像ではトラックの荷台に乗った男性が執拗に箒(ほうき)で叩かれていました。
お尻、腰、お腹、果ては、ヘルメットをかぶっているとはいえ、頭まで…。
男性は悲鳴を上げ、そこに笑い声が重なる…そんな映像でした。
今年(2022年)の1/14、岡山県の建設会社で外国人技能実習生が従業員から酷いいじめを受けていたことがニュースになりました。
その様子が動画に撮られており、冒頭の描写がその内容です。
※ニュース記事はこちら
外国人技能実習生へのいじめ問題は今に始まったことではありません。
どうしたらこうした愚かで悲しい出来事が減るのか、今回は技能実習生へのいじめの原因と対策についてお伝えします。
いじめが起きる原因
言葉の壁
当然ですが、技能実習生は日本語が不自由です。
話せる人でも、なんとか日常会話が行える程度の場合がほとんどです。
そうなると当然、仕事上の専門的な言葉はわかりません。
そのことに周囲の苛立ちが、次第にいじめへと発展していくこともあります。
冒頭のニュースでのいじめ事件についても、最初はそうしたことから次第にエスカレートしていったようです。
技能実習生の孤立
技能実習生にとって「日本」は知り合いもいない、見知らぬ異国地です。
ですから彼らにとって日本での人間関係の大部分は職場であり、その職場に馴染めないと孤立してしまいます。
そして孤立してしまうといじめの標的になりやすく、周りに相談できる人がいないことで、いじめがエスカレートするという負の連鎖が起きやすくなります。
文化や習慣の差
国が変われば生活習慣や文化、価値観も違います。
技能実習生が母国とは違う日本の習慣や文化に慣れるのは容易なことではありません。
中には思想信条などの理由から、どうしても受け入れられないこともあるでしょう。
また、習慣の違いから日本人から見ると奇異に映る行動を取ってしまうこともあるでしょう。
一方で日本人には「郷に入っては郷に従え」という考え方があります。
そうした意識のもと、日本の文化や職場の習慣に馴染めない技能実習生をいじめる従業員が出てくる可能性は十分にあります。
技能実習生の問題を防止するための解決策
ここではいじめを防ぐ為に企業ができることをお伝えしていきます。
すぐに相談できる環境を作る
技能実習生がいじめを受けた時、また、いじめを目撃した従業員が相談できる部署を用意しておくことが大切です。
そうした部署があれば技能実習生も従業員も安心できますし、いじめの抑止力にもなります。
部署へ配置する人員は、技能実習生の母国語が理解できる人にすると良いかもしれません。
社内以外の相談窓口として、技能実習生と企業をサポートする監理団体があります。
この団体の存在を、技能実習生を含め、全社員へ共有しておくことも大切です。
また、外国人技能実習機構(OTIT)にも、技能実習生への緊急SOS窓口があります(下記リンク参照)。
そうした情報も技能実習生へ伝えてあげましょう。
仕事以外での交流の場を設ける
いじめの根底には相手への無理解があります。
外国人である彼らをすぐに理解できないのは当たり前ですし、彼らも日本人である私達をすぐには理解できないでしょう。
ですから、仕事上の関係を離れたところで、ざっくばらんに話し、お互いのことを知る場を設けることも大切です。
コロナ下でお店などに集まれなくても、職場の中で昼休みなどちょっとした時間を活用し、親睦の場を設けることはできるはずです。
外国人技能実習制度についての理解を浸透させる
技能実習生へのいじめは、仕事で彼らと接する現場の従業員によって引き起こされます。
ですから、外国人技能実習制度の目的を、現場の従業員にまでしっかり理解させることが大切です。
どのような目的でこの制度が始まり、どのような目的で彼らが自分の会社へ来るのかがわかれば、「言葉も分からない面倒な外国人が来る」といった認識も改められるでしょう。
逆を言えば、そうした認識がなくなるまで、繰り返しこうした学習の場を設けることが必要です。
同時に、技能実習生の母国の習慣や宗教、価値観などを学ぶ場を設けるとなお良いでしょう。
警察へ通報する
正直、ここまでのケースに発展する事はとても悲しいことです。
誰も得をしません。
しかし、どうしようもない場合は、緊急処置として警察へ通報するのも1つの手です。
もちろんそのあとで、どうしてそのようなことが起きたか社内で検討し、当事者同士を配置換えするなど、具体的な再発防止策を講じることも大切です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は冒頭でお伝えした岡山での事件を受け、技能実習生へのいじめの原因やその対策について説明しました。
技能実習生が文化や習慣、言葉の壁を乗り越え、日本で働くのは大変なことです。
だからこそ、受け入れる側の企業が制度や技能実習生についての理解を深め、彼らが不安なく働ける環境を整えることが大切です。
当たり前ですが、同じ職場の人間に暴力を振るうなど、あってはならないことです。
こうした問題が起きぬよう、技能実習生を雇用している企業、これから雇用を考えている企業は今一度、従業員への教育や理解は十分か検討してみましょう。
決して起きてほしくない内容ですが、もしご相談先にお困りの場合、当組合までご相談ください。