外国人材を雇ったら、給与はどう決める?基本の考え方

2026年10月5日   ブログ

外国人材を採用するとき、「給与はどう決めればいいのか」「日本人と同じ基準で考えていいのか」と迷う企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。外国人材の給与の決め方で、まず押さえておきたいのは、国籍を理由に特別な賃金基準を設けるのではなく、日本の労働関係法令と社内の合理的な基準に沿って考えることです。

この記事では、最低賃金、日本人従業員との比較、月給制での確認、食費・居住費などの控除まで、外国人材を雇用する企業が知っておきたい基本的な考え方を整理します。

外国人材の給与も「日本人と同じルール」が基本

外国人材の給与について考える際、最初に理解しておきたいのが「外国人だから別の給与ルールになるわけではない」という点です。日本国内で働く限り、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令は、原則として国籍を問わず適用されます。厚生労働省の外国人雇用管理指針でも、外国人労働者に対する適正な労働条件の確保が示されています。

労働基準法第3条が定める「均等待遇」

労働基準法第3条では、使用者が労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的な取扱いをしてはならないという考え方が定められています。

つまり、「外国人だから」という理由だけで、日本人従業員よりも低い給与を設定するという考え方は適切ではありません。

一方で、外国人材と日本人従業員の給与が、どのような場合でもまったく同額でなければならないという意味でもありません。経験、能力、担当する仕事、責任の程度などに合理的な違いがある場合、その違いを踏まえて賃金に差が生じることまで否定されるものではありません。

重要なのは、国籍ではなく、仕事や経験、能力、責任など、社内で共通する基準をもとに給与を考えることです。

たとえば日本人従業員については経験や役割を評価して給与を決めているのに、外国人材についてだけ「外国人向けの給与」として別の基準を設けるような考え方は避ける必要があります。

外国人材を採用するときこそ、「この仕事に対して会社はどのような基準で給与を設定しているのか」を改めて整理することが大切です。

外国人材にも日本の労働関係法令が適用される

厚生労働省の外国人雇用管理指針では、国籍を理由とした賃金等の差別的取扱いをしないことに加え、賃金や労働時間など主要な労働条件を書面等で明らかにすること、最低賃金額以上の賃金を支払うこと、基本給や割増賃金などを原則として全額支払うことなどが示されています。

これは技能実習、特定技能など特定の制度だけに限った考え方ではありません。外国人材を雇用する企業として押さえておきたい基本的な雇用管理の考え方です。

ただし、在留資格や制度によって、さらに追加の要件が設けられている場合があります。

たとえば特定技能については、出入国在留管理庁が、外国人に支払う報酬額について、日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上であることを求めています。

そのため、外国人材の給与を検討するときは、一般的な労働関係法令だけでなく、採用する外国人材の在留資格や適用される制度についても個別に確認することが推奨されます。

外国人材の給与の決め方|決める前に確認したい3つのこと

では、実際に外国人材の給与を決めるとき、企業は何を確認すればよいのでしょうか。給与額そのものを考える前に、「最低賃金」「日本人従業員との比較」「労働条件の明示」という3つの視点から整理すると分かりやすくなります。

① 地域別・産業別の最低賃金を確認する

最初に確認したいのが、その時点で適用される最低賃金です。

外国人材にも最低賃金法は適用されます。また、地域別最低賃金と産業別(特定)最低賃金の双方に該当する場合には、高い方の最低賃金が適用されます。

ここで注意したいのは、最低賃金は固定されたものではなく、改定されるという点です。

以前採用したときの金額や、過去に作成した求人票に記載されていた金額だけを基準にせず、採用時や給与を見直す際には、その時点での最新情報を確認することが重要です。

三重県で外国人材を雇用する場合も、三重労働局など公的機関が公表している最新の最低賃金情報を確認することが推奨されます。

② 同じ仕事をする日本人の賃金と比較する

次に確認したいのが、社内で同様の仕事を担当している日本人従業員との比較です。

「最低賃金を上回っているから、それだけで給与設定に問題はない」と考えるのではなく、同じ会社の中で、同程度の仕事や責任を担っている人がどのような基準で評価されているのかを見ることが重要です。

外国人材だからという理由だけで給与を低くすることは認められません。一方で、経験、能力、責任の程度などに合理的な違いがあれば、それを反映した給与差まで否定されるものではありません。

そのため大切なのは、「外国人か日本人か」ではなく、仕事内容、経験、能力、役割、責任などを社内で共通する考え方によって評価することです。

特定技能の場合には、出入国在留管理庁から、日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上の報酬額とすることが示されています。

外国人材を採用する際には、既存の給与体系や賃金規程についても一度確認し、「なぜこの給与になるのか」を会社として説明できる状態にしておくことが、実務上も重要ではないでしょうか。

③ 労働条件を書面で分かりやすく伝える

給与を適切に決めても、その内容が本人に伝わっていなければ、受け入れ後の認識の違いにつながる可能性があります。

厚生労働省の外国人雇用管理指針では、労働契約を締結する際、賃金や労働時間など主要な労働条件について、その内容を明らかにした書面を交付することなどが示されています。また、外国人労働者が理解できる方法で明示するよう努めることも示されています。

給与についても、「月給はいくらか」だけではなく、賃金の決定・計算・支払方法や、給与から控除されるものなどについて、本人が理解できるよう説明することが大切です。

企業側では当たり前だと思っている給与体系でも、雇用慣行や給与明細の見方に慣れていない外国人材にとっては分かりにくいことがあります。

採用時に条件を伝えて終わりではなく、本人が理解できているかまで確認する姿勢が、雇用後の信頼関係にもつながっていくのではないでしょうか。

月給制でも最低賃金の確認が必要|時間あたりに直して見る

外国人材を月給制で採用する企業もあるでしょう。その場合も、月給として支払っている金額だけを見るのではなく、最低賃金との関係を確認する必要があります。

月給の総額だけでは判断しない

月給制の場合には、最低賃金との比較のため、対象となる賃金を時間あたりの額に換算して確認する必要があります。

「月給だから最低賃金とは直接関係しない」ということではありません。

ただし、最低賃金との比較では、賃金のどの部分を対象として考えるのかなど、確認すべき事項があります。そのため、本記事では独自の計算式や具体的な給与額を使った計算例は掲載しません。

実際に自社の月給が最低賃金を満たしているか確認するときは、厚生労働省や三重労働局などが示している最新の案内を確認することが推奨されます。厚生労働省も、最低賃金制度について不明な場合には都道府県労働局や最寄りの労働基準監督署への問い合わせを案内しています。

「採用したときは大丈夫だった」で終わらせない

もう一つ重要なのが、給与設定を採用時だけの確認事項にしないことです。

最低賃金は改定されるため、以前決めた給与が現在も最低賃金との関係で適切かどうかは、その時点の最新情報をもとに確認する必要があります。

これは外国人材だけに限った話ではありません。

日本人従業員を含めて、会社全体の給与体系を定期的に確認する中に外国人材も含めるという考え方が自然です。

「外国人材の給与だけを特別に管理する」のではなく、「会社の給与制度の中で外国人材についても同じように確認する」。この視点を持つことで、給与管理も分かりやすくなるのではないでしょうか。

給与から「引いていいもの・いけないもの」

外国人材の雇用実務で、給与額と同じくらい確認しておきたいのが「控除」です。特に会社が住居を用意する場合などは、食費や居住費を給与から控除するケースについて、事前に正しい取扱いを確認しておくことが重要です。

賃金は全額払いが原則

労働基準法では、賃金の全額払いが原則とされています。厚生労働省の外国人雇用管理指針でも、外国人労働者に対して最低賃金額以上を支払うだけでなく、基本給や割増賃金等について、法令に別段の定めがある場合や労使協定が締結されている場合を除き、全額を支払うことが示されています。

つまり、「会社が必要だと思う費用だから」という理由だけで、自由に給与から差し引いてよいわけではありません。

法令上認められている控除なのか、労使協定など必要な手続きが整っているのかを確認することが重要です。

食費や居住費など、外国人材の受け入れに伴って発生しやすい費用についても、最初から給与と控除を分けて整理しておくことが推奨されます。

食費や居住費は「本人が理解しているか」も重要

労使協定に基づいて食費や居住費などを賃金から控除する場合には、その額について実費を勘案し、不当な額とならないようにすることが外国人雇用管理指針で示されています。

さらに大切なのが、本人への説明です。

給与明細に控除項目が記載されていたとしても、外国人材本人が「なぜこの金額が引かれているのか」を理解できていなければ、企業側との認識に違いが生じる可能性があります。

給与を提示するときには、支給される賃金だけでなく、どのような控除があり、何のための費用なのかについても、本人が理解できる方法で説明することが大切です。

外国人雇用管理指針でも、税金、雇用保険や社会保険の保険料、労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いについて、外国人労働者が理解できるよう説明することが示されています。

本人の意思に反する強制的な貯金は認められない

給与管理でもう一つ注意したいのが、貯金の扱いです。

労働契約に付随して貯蓄の契約をさせたり、貯蓄金を管理する契約をしたりすることは認められていません。外国人雇用管理指針でも、この点が明確に示されています。

企業側に「本人のために貯めておいた方がよい」という善意があったとしても、本人の意思に反して給与の一部を会社側で管理するという考え方は避ける必要があります。

給与、控除、本人の資産管理はそれぞれ分けて考えることが重要です。

判断に迷う場合には、独自に解釈するのではなく、労働基準監督署や労働局などの公的機関へ確認することが推奨されます。

この考え方をふれんど協同組合はどう見ているか

ここまでは、労働基準法や厚生労働省の外国人雇用管理指針などをもとに、外国人材の給与の決め方を整理してきました。ここからは、給与を「採用条件」だけではなく、その後の雇用関係まで含めて考えてみます。

給与は「価格」ではなく信頼関係の土台ではないでしょうか

外国人材を採用するとき、「いくらで採用するか」という話だけが先に進んでしまうことがあります。

しかし、本当に大切なのは、その給与について企業側が理由を説明でき、働く本人も内容を理解し、納得した状態で仕事を始められることではないでしょうか。

「どのような仕事を担当するのか」

「どのような基準で給与が決まっているのか」

「経験や能力が上がったとき、どのように評価されるのか」

「給与から何が控除されるのか」

こうした点が最初から整理されていれば、外国人材にとっても自分の働き方や将来を理解しやすくなります。

反対に、給与額そのものに問題がなくても、説明が不足していれば「聞いていた条件と違う」「なぜこの金額なのか分からない」という認識の違いにつながる可能性があります。

給与は単なるコストではなく、企業と働く人との信頼関係をつくる土台の一つとして捉えることが大切ではないでしょうか。

外国人材の採用が、社内の給与制度を見直すきっかけになる

外国人材を受け入れることになり、初めて「自社の給与は何を基準に決めているのだろう」と考える企業もあるかもしれません。

日本人従業員については長年の慣習で決めてきた給与でも、外国人材へ説明しようとすると、評価基準が曖昧だったことに気づくケースも考えられます。

これは決して外国人材だけの問題ではありません。

「経験をどう評価するのか」「責任が増えたらどう評価するのか」「同じ仕事をする人の給与に違いがある場合、その理由を説明できるのか」と整理していくことは、日本人従業員を含めた会社全体の雇用管理を考えることにもつながります。

外国人材の受け入れを、外国人向けの特別な制度をつくる機会と考えるのではなく、誰が働いても説明できる給与制度になっているかを確認する機会と捉えてみてもよいのではないでしょうか。

ふれんど協同組合は、組合員企業により運営される協同組合です。農業・製造業・介護・建設・自動車整備の5業種が加盟し、教育面では一般社団法人KJKと連携しています。

外国人材を採用すること自体を目的にするのではなく、受け入れる企業と働く本人の双方が、条件を理解したうえで働ける環境を整えていくことが重要だと考えています。

外国人材の給与の決め方|よくある質問

外国人材の給与については、最低賃金だけでなく、日本人従業員との比較や控除、在留資格ごとの要件など複数の視点から確認する必要があります。ここでは、企業様から想定される代表的な疑問を整理します。

Q. 外国人材の給与を日本人より低く設定することはできますか?

A. 外国人であることだけを理由として、日本人より低い賃金を設定することは認められません。一方で、経験・能力・担当業務・責任の程度など合理的な違いによって差が生じることまで否定されるものではなく、国籍ではなく社内で共通する基準で判断することが重要です。

Q. 外国人材の給与は、最低賃金を上回っていれば問題ありませんか?

A. 最低賃金だけで判断するものではありません。同じ仕事をする日本人従業員との比較や、労働条件の明示、適用される在留資格・制度に追加の要件がないかなども確認することが推奨されます。特定技能では、日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上の報酬額であることが求められています。

Q. 月給で支払う場合、最低賃金はどう確認すればよいですか?

A. 月給制の場合にも、最低賃金との比較のため時間あたりの額に換算して確認する必要があります。具体的な算定方法については、厚生労働省や労働局など公的機関が公表する最新の案内をご確認ください。

Q. 寮費や食費を給与から引くことはできますか?

A. 賃金は全額払いが原則です。法令上認められる場合や労使協定に基づく場合などを除き、自由に控除できるものではありません。労使協定に基づいて食費・居住費などを控除する場合にも、実費を勘案して不当な額とせず、外国人材本人が理解できるよう説明することが求められています。

Q. 給与の決め方について相談できますか?

A. ふれんど協同組合では、外国人材の受け入れを検討されている企業様からのご相談を受け付けています。給与や労働条件について法令上の個別判断が必要な場合には、労働基準監督署や労働局などの公的機関への確認も含めて検討することが推奨されます。

外国人材の雇用は「給与額」だけでなく、説明できる仕組みづくりから

外国人材の給与の決め方で重要なのは、「外国人向けの特別な金額」を考えることではありません。

最低賃金を確認し、日本人従業員との比較を行い、仕事内容・経験・能力・責任などに基づいた社内の基準で給与を考える。そして、給与や控除の内容を本人が理解できるよう伝える。こうした基本を一つずつ整理することが、外国人材を受け入れる際の大切な準備になります。

外国人材の採用をまだ具体的に決めていない企業様でも、「自社の場合はどのような準備が必要なのか」「どのような点から確認すればよいのか」という段階からご相談いただけます。

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